「高畑勲展」開幕! “時間をかけて堪能したい”貴重な資料の数々と心に沁みる高畑作品の裏側
2025年6月27日より、東京の「麻布台ヒルズ ギャラリー」で『火垂るの墓』や『アルプスの少女ハイジ』といった名作を手掛けた高畑勲氏の原画などが展示される「高畑勲展ー日本のアニメーションを作った男」が開催中です。では、具体的にどういった内容が展示されているのでしょうか?
日本のアニメーションを作った男

2025年6月27日から9月15日にかけて、東京の「麻布台ヒルズ ギャラリー」で『火垂るの墓』や『アルプスの少女ハイジ』など歴史に残る名作を数多く手掛けた高畑勲監督が遺した原画などが展示される「高畑勲展ー日本のアニメーションを作った男」が開催中です。今回、マグミクス編集部ではマスコミ向け内覧会についてレポートします。
この日、会場に詰め掛けたマスコミの数は100を超えており、没後7年が経過しても高畑勲氏の名前と残した作品は色あせることなく多くの人の心に強い印象を残し続けていることが明らかになりました。内覧会に先駆けて行われたオープニングセレモニーではまず高畑監督のご長男である高畑耕助氏と監督の奥様である令夫人が登壇。耕助氏よりあいさつが行われました。
続いて登壇したのは爆笑問題の太田光氏と映画監督の岩井俊二氏。太田氏が高畑作品について熱く語るなか、岩井氏は実は高畑監督の遠縁の親戚だったことを明かします。映像の世界に進む前に高畑氏より約2時間の熱い薫陶(くんとう)を受けたエピソードを披露し、会場を沸かせました。
セレモニー終了後はいよいよ展覧会会場へ。巨大な節子のキービジュアルの脇を抜け、まず目に入るのが巨匠・篠山紀信氏の手による高畑監督の肖像写真です。故人を偲ぶ展示を眺めながら足を進めると、高畑氏の初監督作品(名義は演出)であるアニメ映画『太陽の王子 ホルスの大冒険』のブースへとたどり着きます。
ホルスは宮崎駿氏が本格的にアニメーション制作に携わった作品でもあり、後のスタジオジブリ誕生へとつながるアニメの歴史に大きな影響を与えた作品です。当時の検討台本やイメージボードなど数々の貴重な展示が行われており、高畑氏のファンのみならず、アニメの歴史に興味がある人にとっては必見の価値があるでしょう。

●ハイジや赤毛のアンの貴重な資料も
『パンダコパンダ』の愛らしいパンダたちのブースを抜けると到達するのが日本アニメーション時代に手掛けた『アルプスの少女ハイジ』『母を訪ねて三千里』『赤毛のアン』のブースです。いつも明るく元気なハイジ、いかなる困難にも負けず前へと進む「マルコ」、手違いで養子に入ったにも関わらず、心の強さと明るさで自分の居場所を作り上げた「アン」など、いずれも異国情緒にあふれ、少年少女たちの日常と成長を描いた大傑作です。
当然数多くの原画や資料、イメージボードが展示されており、おそらくは多くの人がここで長い時間を過ごしたくなるのではないでしょうか。
かつて関西方面で再放送が繰り返された『じゃりン子チエ』、そして『セロ弾きのゴーシュ』のブースの次に待っているのが、『火垂るの墓』です。高畑監督の代表作にして多くの視聴者に戦後の悲惨さを伝えた傑作には当然ながら多くのスペースが割かれており、なかには庵野秀明氏による幻のカット「重巡洋艦摩耶」も展示されています。「節子」の笑顔の後に来る出来事を覚えている人は、ぜひ追体験をしてみてはいかがでしょうか。
その後は高畑監督が手掛けた劇場作品『おもひでぽろぽろ』『平成狸合戦ぽんぽこ』『ホーホケキョ となりの山田くん』『かぐや姫の物語』と展示が続きます。特筆すべきは『かぐや姫』で、絵コンテを見ても意味がさっぱり分からず、ここからどのような動きが生み出されるのか見当も付かないレベルに達しています。50年以上の経験を経なければ、分からない境地があることを思い知らされる展示です。
そのほかにもフォトスポットやショップ、「喫茶 高畑勲展」など楽しみどころは満載なので、ぜひ時間を作って足を運んでみてはいかがでしょうか。
展示物の権利表記:
(C)東映 (C)TMS (C)ZUIYO 「アルプスの少女ハイジ」公式HP www.heidi.ne.jp (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD. (C)NIPPON ANIMATION CO., LTD. “Anne of Green Gables”TM AGGLA (C)オープロダクション (C)野坂昭如/新潮社,1998 (C)1991 Hotaru Okamoto, Yuko Tone/Isao Takahata/Studio Ghibli, NH (C)1994 Isao Takahata/Studio Ghibli, NH (C)1999 Hisaichi Ishii/Isao Takahata/Studio Ghibli, NHD (C)2013 Isao Takahata, Riko Sakaguchi/Studio Ghibli, NDHDMTK
(早川清一朗)