『パンダコパンダ』を観れば気分は爽快? 多幸感あふれる高畑&宮崎コンビの快作
ファンタジー要素が強まった『雨ふりサーカス』

「パンダ、コパンダ、パパンダ♪」と水森亜土さんが歌う主題歌も耳なじみがよく、続編『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』が翌年3月に公開されています。前作の分かりやすい面白さはそのままに、その後の宮崎駿監督作品を思わせるファンタジー要素が強まった内容となっています。こちらも、上映時間はわずか38分の作品です。
ミミ子とパンダ親子が暮らす家に、虎の男の子のトラちゃんが迷い込んできます。トラちゃんと仲良くなったミミ子たちは、街にやってきたサーカス団の興行に招待されることに。ところが、天候が崩れ、街は大雨に見舞われてしまいます。街全体が水没したなか、ミミ子たちはベッドをイカダ代わりにして、トラちゃんたちサーカス団の動物を救出に向かうのでした。
宮崎駿監督は、現在再放送中のTVアニメ『未来少年コナン』(NHK総合)の第19話「大津波」や、劇場アニメ『崖の上のポニョ』(2008年)でも洪水の様子を非常にリアルに描いてみせました。劇場デビュー作『ルパン三世 カリオストロの城』(1979年)の湖の底から古代都市が出現するシーンも、とても印象的でした。宮崎駿監督作品というと、主人公が空をふわりと浮遊するシーンが思い浮かびますが、日常の風景が雨や水によって大きく変貌するシーンの描写にも非凡さを感じさせます。
観る人を元気にするアニメーション
いつも明るく元気なミミ子は、実は両親がいないという設定です。お母さんのいない子パンダのパンちゃんの母親代わりとなり、パンダの親子と疑似家族を構成することになります。ミミ子はパンちゃんに愛情を注ぐことで、親のいない孤独さを穴埋めします。『パンダコパンダ』で父親代わりとなるパパンダに抱きつくシーンの、ミミ子のうれしそうな顔も忘れられません。
ミミ子とパンダ親子が実の親子以上に仲良くなっていく様子は、『アルプスの少女ハイジ』『赤毛のアン』(共にフジテレビ系)などの「日常アニメ」で知られることになる高畑勲監督の真骨頂だと言えるでしょう。
宮崎駿監督の長男・宮崎吾朗監督にとっても、『パンダコパンダ』は大切な作品となっています。宮崎駿監督は、まだ幼かった息子たちを喜ばせるために『パンダコパンダ』を考え、作り上げたのです。宮崎家にとって、父と子の楽しい思い出の詰まった作品でもあるようです。
アニメーションの語源である「animate」には、「命を吹き込む」「元気づける」「励ます」などの意味があります。観る人みんなを元気にするアニメーション、それが『パンダコパンダ』と『パンダコパンダ 雨ふりサーカス』なのではないでしょうか。
(長野辰次)