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「アニメの粋を超える」クオリティだった『チェンソーマン』 それでも賛否分かれたワケ

TVアニメ『チェンソーマン』は、MAPPAの作画力が光ったハイクオリティな作品でしたが、意外にもファンの評価は大きく分かれています。その要因とはいったい何だったのか、放送からおよそ3年が経ったいま、改めて振り返ってみましょう。

完成度は高かったはずなのに、なぜ荒れた?

画像は、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』ポスタービジュアル (C)2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト (C)藤本タツキ/集英社
画像は、劇場版『チェンソーマン レゼ篇』ポスタービジュアル (C)2025 MAPPA/チェンソーマンプロジェクト (C)藤本タツキ/集英社

 いよいよ劇場版『チェンソーマン レゼ篇』の公開日が間近に迫ってきました。本作は2022年に放送されたTVシリーズの続編にあたる作品で、アニメ最終盤に登場した謎の少女「レゼ」が物語のカギを握ります。映画公開を前に、アニメ版を見直している人も多いのではないでしょうか?

 実はTVアニメシリーズに対する評価は、当時ファンの間で大きく意見が分かれていました。絶賛の声があがる一方で、否定的な意見も少なくなかったのです。なぜこれほどまでに賛否が分かれたのか、その理由を改めて振り返ります。

 まず本題に入る前に強調しておきたいのは、TVアニメ『チェンソーマン』が決して悪評一色だったわけではない、という点です。制作を手がけた「MAPPA」は、『進撃の巨人 The Final Season』や『呪術廻戦』などを代表作に持ち、業界屈指の作画力で知られています。本作においてもその技術力は存分に発揮され、手描き(2Dアニメーション)と3DCGを組み合わせた映像美は、「TVアニメの粋を超えている」「質感がリアルすぎ!」といった賛辞を集めました。

 また音楽面では、オープニング主題歌に米津玄師さんの『KICK BACK』、挿入歌にはマキシマム ザ ホルモンの『刃渡り2億センチ』、エンディングは豪華アーティストが週替わりで担当していました。

 それにもかかわらず、なぜ一部のファンから否定的な声が寄せられたのでしょうか? その主な理由としてよくあがるのが、「構図」と「シリアスさ」の違いでした。

 例えば原作は「アップ寄りの構図」が多く、マンガ的な勢いのある表現が特徴的でしたが、TVアニメ版は「引きの構図」を多用し、実写映画的なリアリティを演出していました。この違いは特に戦闘シーンを見ると分かりやすく、第1話でチェンソーマンとなったデンジが大量のゾンビと戦う場面や、コウモリの悪魔との戦闘シーンで確認することができます。

 監督を務めた中山竜さんのインタビューによると、こうした表現の違いは意図的なものだったようで、原作の魅力や空気感を表現するため、あえて写実的で映画的な要素を採用したとのことでした。しかし一部の原作ファンにとっては、それが「解釈違い」に感じられたのでしょう。

 また声優の演技に関しても、一般的にはイントネーションやテンポ、抑揚を強調することでキャラクター性を際立たせることが多いなか、本作ではそうした表現をあえて抑え、日常会話に近いリアルな演技を前面に出していました。こうした方針は監督が掲げた「リアリティ重視の作風」と合致する一方で、主人公の「デンジ」や「パワー」といった個性的なキャラクターの「色が薄まった」と感じたのかもしれません。

 原作では、彼らの予測不能な言動がギャグとして勢いを生み、作品の重苦しい展開を緩和していました。一方でアニメ版は、リアルさに重きを置いたことによってシリアスな雰囲気が強く、原作と比べるとハチャメチャ感が抑えられたように感じたのでしょう。

 こうした演出がマイナスに受け止められた一方で、「映画のような落ち着いたシリアス感が好き」「映えない構図をあえて採用して映画的な高級感を出していたのが挑戦的で面白かった」などと評価する声も少なくありません。つまり、従来のアニメ的演出から離れた挑戦は、賛否こそ分かれたものの、多くの視聴者に新鮮な映像体験として受け止められていたのではないでしょうか?

 もっとも、原作の人気が高ければ高いほど、原作ファンからは厳しい目が向けられるものです。実際、『チェンソーマン』の原作人気は群を抜いており、その分アニメ化への期待値も異常に高まっていました。賛否が巻き起こったのも、ある意味では避けられないことだったのかもしれません。

 果たして劇場版『チェンソーマン レゼ篇』はどのような映像体験を届けてくれるのか、2025年9月19日(金)の公開日が待ち遠しいですね。

(ハララ書房)

【画像】色気ヤバくない? こちらが『チェンソーマン』の主人公を差し置いて『anan』の表紙を飾った相棒です

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ハララ書房

エンタメ記事専門の編集プロダクション。漫画・アニメ・ゲームはもちろん、映画やドラマ、声優にも精通。メイン・サブを問わず、カルチャーの最前線を追いかけていきます。