GBA『ボクらの太陽』ボス戦にリアル太陽光が必須! 猛暑を気にせず熱中した思い出
2003年7月17日、コナミからゲームボーイアドバンス用ソフト『ボクらの太陽』が発売されました。「メタルギアソリッド」シリーズの監督として有名なゲームクリエイター・小島秀夫氏が手掛け、太陽光を集める必要がある画期的なシステムのゲームでした。
「メタルギアソリッド」小島秀夫氏が手掛ける

本島の梅雨明けは明確にまだ発表されていないものの、季節はとうに初夏を通り過ぎて夏。ミンミンと騒ぎ立てるセミの背中や、アスファルト上にゆらゆらとうごめく陽炎(かげろう)がそろそろ見える頃かもしれません。この時期になると毎年思い出すのが『ボクらの太陽』(以下、ボクタイ)。2003年7月17日にコナミがおくりだした、画期的なゲームボーイアドバンス(以下、GBA)用ソフトです。
「メタルギアソリッド」(以下、MGS)シリーズの監督として有名なゲームクリエイター・小島秀夫氏が手掛けた本作。プレイヤーは主人公の”太陽少年”こと「ジャンゴ」(CV:水間真紀)となり、「イモータル」と呼ばれる闇の種族を打ち倒すため、また敵との戦いで命を落とした父親「リンゴ」の仇をとるため、相棒の精霊「おてんこさま」(CV:大塚明夫)と共に、アンデッドがはびこる危険な都「イストラカン」へ歩みを進めます。
重たい雰囲気が立ち込めるフィールドをくまなく探索しつつ、アンデッドの巣と化したダンジョンに潜入。行く手を阻む不気味なアンデッドを父親の形見「ガン・デル・ソル」で蹴散らし、最深部のイモータル(ボス)も撃破。その後、倒したイモータルを棺桶に封じ込め、ダンジョンの外で”浄化”する(詳細は後述)……というのが、本作の大まかな流れです。ダンジョン内部の仕掛けを解いて進むパズル要素や、同じダンジョンでも往復路のプレイフィールが異なる仕様、そして”壁を叩いてアンデッドをおびき寄せる”といった「MGS」らしいステルスアクションなど、おおよその根幹はシリーズ始動を司る1作目の段階から既に作り込まれていました。
ちなみに本作は、メーカーの垣根を越えた大々的なコラボレーションが行われたことでも有名です。その発端となったのが、2003年12月12日発売のGBA用ソフト『ロックマンエグゼ4 トーナメントレッドサン/ブルームーン』。同作には『ボクタイ』のジャンゴとおてんこさまがゲスト出演し、「ロックマン」と力を合わせて吸血鬼モチーフの敵を撃破するコラボイベントが用意されていました。ここから『ボクタイ』と『ロックマンエグゼ』は数作にわたってコラボを展開。特別アイテムの実装やオリジナルストーリー、両タイトルを用いたクロスオーバーバトルなどなど、当時としてはたぐいまれな豪華コラボが実現したのです。
太陽光を生かした画期的なゲームシステム
『ボクタイ』は”太陽”をロゴの意匠やキャラクター設定、世界観の構築に取り入れただけではなく、文字通り”現実の太陽”を活用するゲームシステムが組み込まれていました。そしてカセットに内蔵された太陽光を利用するこのシステムこそ、『ボクタイ』を唯一無二のゲーム作品へと昇華させたと記憶しています。
カセット本体の内部に取り付けられた、わずか数ミリほどの黒い小型チップ。これが「太陽センサー」であり、太陽光(正確には紫外線)をゲーム内へ取り込み、ガン・デル・ソルの太陽エナジーとして反映させる働きをしていたのです。言わずもがな、太陽がサンサンと照りつける晴れた日はエナジーの充填速度も早く、逆にどんよりとした曇り空の場合は太陽エナジーの集まり具合が少々遅め。とはいえ、太陽光がなくともエナジーが溜まる救済措置もいくつか存在したため、「太陽光がないと全くプレイできない!」といったわけではありませんでした。
ところが先述のイモータルを浄化させるとなれば話は別。ボス戦後に始まるイモータルの浄化パートは「パイルドライバー」を起動し、太陽の力をもってして完全に消し去る必要があるからです。こちらは太陽エナジーが必須となっており、太陽光の差し込まない場所や屋内、夜間時では実質プレイ不可能。太陽光がないためにパイルドライバーが起動せず、何とかしてエナジーを集めようと光源へカセット本体を近づけたプレイヤーも少なからずいたのではないでしょうか。
午前中に宿題を手早く済ませ、午後はGBAを引っさげて近所の公園へ。水飲み場で喉を潤しつつ、集まった友人と一緒にゲームを起動。そのまま「太陽ぉぉぉぉぉ!!」とふざけあい、汗かきのままエナジーを満タンまでチャージしていた思い出は、色褪せることない筆者の思い出となりました。思う存分外を走り回る時間と余裕こそ心もとなくなりましたが、『ボクタイ』と一緒に過ごしたひと夏はこの先も忘れそうにありません。
(龍田優貴)