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『あんぱん』指輪を受け取った蘭子はその後どうなる? モデルとなったロールパンナ、向田邦子さんの場合は

朝ドラ『あんぱん』が、いよいよフィナーレを迎えます。『アンパンマン』がアニメ化され、主人公夫婦が大成功を収めることは、すでに視聴者は知っているわけですが、のぶの妹・蘭子にはどんな結末が待っているのでしょうか? 蘭子のモデルとなった「ロールパンナちゃん」のキャラクター設定と、脚本家の向田邦子の生涯を参考に、蘭子の生き方を考察してみます。

蘭子と八木社長のシーンだけ、ドラマの「湿度」が高くなる?

『あんぱん』で文筆活動で活躍する蘭子を演じる、河合優実さん(2024年11月2日、時事通信フォト)
『あんぱん』で文筆活動で活躍する蘭子を演じる、河合優実さん(2024年11月2日、時事通信フォト)

「たまるかー」という土佐弁がおなじみとなっているのが、NHK連続テレビ小説『あんぱん』です。2025年9月26日(金)の最終回まで、残すところわずか。嵩(演:北村匠海)、のぶ(演:今田美桜)の夫婦にとっては、我が子のような絵本『アンパンマン』がついにTVアニメ化され、大団円を迎えることになりそうです。

 一方、のぶの妹である蘭子(演:河合優実)と、「キューリオ」の八木社長(演:妻夫木聡)との仲が最終的にどうなるのか、気をもんでいる視聴者も多くいました。129話では、難民キャンプの取材で海外に行く前の蘭子に、八木がバースデーカードと一緒にいれた指輪を渡し、八木が「帰ってきたら考えてくれ」と言うと、蘭子は「はい」と笑顔で返事をしています。

 蘭子と八木社長のふたりのシーンは、これまでも別ドラマのように急に湿度が高くなっていました。

 三女のメイコ(演:原菜乃華)は、NHKのディレクターになった健太郎(演:髙橋文哉)と結婚。のぶは最初の夫・次郎(演:中島歩)とは死別しましたが、嵩と再婚しています。

「二重人格」という設定のロールパンナちゃん

 脚本家の中園ミホさんによると、主な登場人物たちはそれぞれ『アンパンマン』の人気キャラクターたちが投影されているそうです。嵩を振り回し続けるのぶは、ドキンちゃん。愛されキャラのメイコは、メロンパンナちゃん。そして、ちょっとクールな蘭子は、ロールパンナちゃんという設定です。

 YouTubeで配信されているアニメ『それいけ!アンパンマン』の放送300回記念「ロールパンナのひみつ」を初めて観て、驚きました。頭にターバンを巻いたロールパンナちゃんは、「二重人格」という設定なんですね。子供向け番組だろうと、『アンパンマン』を舐めていたことを謝ります。やなせたかしワールドは、想像以上にディープです。

 ロールパンナちゃんはメロンパンナちゃんのお姉さんにあたりますが、ジャムおじさんが入れた「まごころ草」の花粉と、ばいきんまんがこっそり入れた「バイキン草」のエキスが混じって誕生しました。そのため、ロールパンナちゃんは正義と悪のあいだで揺れ動くという、複雑なキャラクターとなっています。劇場アニメ『それいけ! アンパンマン ロールとローラ うきぐも城のひみつ』(2002年)では、ブラックロールパンナとなって大暴れします。

 優しい心の持ち主でも、ふとしたことや置かれた状況によって自分の本心に正直になれないことはあるのではないでしょうか。成長の過程にある子供たちに、揺れ動く心の持ち主であるロールパンナちゃんの人気が高いのも分かる気がします。

 妹のメロンパンナちゃんには優しいロールパンナちゃんですが、アンパンマンたちとは距離を置いています。メロンパンナちゃんが「一緒にパン工場で暮らそう」と誘っても、迷惑をかけることを気にかけて、ひとりで飛び去っていきます。

 蘭子の場合は、八木社長に惹かれながらも、戦争で亡くなった恋人・豪(演:細田佳央太)のことがやはり忘れられないようです。蘭子役を演じる河合優実さんの演技のうまさもあって、ロールパンナちゃん同様に、心の揺らぐ蘭子から視聴者も目が離せなくなっていました。

【画像】「確かに似てるかも?」 これがモデルと見られる「20代美人作家」と、『あんぱん』蘭子役の河合優実です(4枚)

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長野辰次

フリーライター。映画、アニメ、小説、マンガなどのレビューや作家インタビューを中心に、「キネマ旬報」「映画秘宝」などに執筆。現在公開中の『八犬伝』(キノフィルムズ配給)の劇場パンフレットなどにもレビューを寄稿している。