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『花鈴のマウンド』女子硬式野球の現実に立ち向かう、ヒロインを応援せずにいられない!

「甲子園のマウンドに立つ」という夢を追いながら、女子硬式野球部で奮闘する主人公の姿を描くマンガ『花鈴のマウンド』は、野球という軸でちょっとしたマメ知識もありつつ、作品独特の人間模様とストーリー性を楽しめる作品です。

野球マンガの「王道」もありながら、作品独特の魅力もたっぷり

『花鈴のマウンド』新装版第1巻(わかさ生活)
『花鈴のマウンド』新装版第1巻(わかさ生活)

 女子硬式野球部員が活躍するマンガ『花鈴のマウンド』は、女子硬式野球が直面する現実を描きつつ、それに立ち向かう選手たちのドラマもしっかり描いた作品です。2020年7月には同作の新装版第4巻が発売されています。

「女の子だって甲子園のマウンドに立ちたい」。そんな夢を抱く主人公・桐谷花鈴(かりん)は、星桜高校の女子硬式野球部でピッチャーです。そして、彼女と同じ高校に通う幼なじみ・大門頼(らい)もまた、男子硬式野球部の頼れるキャッチャーとして、甲子園を目指すひとり。

 甲子園に立つチャンスがある頼と、夢の甲子園に立つことさえできない花鈴。ふたりはそれぞれの事情を抱えながら、お互い最後の夏に向けて猛練習を重ねます。厳しい監督のノックを受けたり、プールで持久力をつけるトレーニングをしたり、女子プロ野球の試合を観戦して練習方法を見直したり。

『花鈴のマウンド』は、こうした野球マンガとしてのバックボーンがものすごくしっかりしているのです。原作をつとめているのは、日本女子プロ野球機構の創設者である角谷建耀知(かくたにけんいち)氏。野球に関する豊富な知識だけでなく、女子硬式野球部で頑張る部員にとって、「甲子園」という目標を持てない現実も、本作ではしっかり描いています。だからこそ、世界観にリアリティが生まれ、夢を追い求める彼女を応援したくなるのでしょう。

 野球という軸を離れても、『花鈴のマウンド』にはいくつもの面白さがあります。たとえば、明快なキャラクターと人物相関図。野球や大人数のスポーツを題材にした作品は、登場人物も自然と増えていきます。しかし、主人公・花鈴や彼女の仲間たち、彼女のライバルたちのキャラクターが分かりやすいので、ストーリーがすっと頭に入ってきます。

 なかには、モチーフがあまりに分かりやすいキャラクターも。作中では嫌われ役なのですが、そのインパクトですっかり筆者のお気に入りキャラのひとりになっています(笑)。

 キャラクターの明快さの一方で、彼女らの人物相関図やストーリーの内容は少し複雑です。花鈴の生い立ちや友達の恋愛エピソード、なぜか野球部を毛嫌いする男の子、花鈴がライバル視する選手の思い……。ただ「分かりやすい」だけじゃない物語性が、「早くつづきを!」という思いをかきたててくれます。

 高校野球としての王道の展開もありつつ、女子硬式野球という作品のユニーク性も魅力十分。これから花鈴が迎える本格的な「最後の夏」が、いまから楽しみです。

(サトートモロー)

【画像】『花鈴のマウンド』甲子園を目指す野球ガールと幼馴染の「絆」描くエピソード(7枚)

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