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お祖父様はまだ「落ち武者」ならんの? 『ばけばけ』勘右衛門(小日向文世)のモデル見たら「こりゃ変えるわけないわ」

『ばけばけ』9話では、司之介が「落ち武者」になったことが話題になりました。今後、祖父の勘右衛門も髷を落とす可能性はあるのでしょうか。

勘右衛門のモデルが生きた幕末の時代

朝ドラ『ばけばけ』主人公のトキを演じる高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真
朝ドラ『ばけばけ』主人公のトキを演じる高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は1890年に来日し、『怪談』『知られぬ日本の面影』などの名作文学を残した小泉八雲さん(パトリック・ラフカディオ・ハーン)と、彼を支え数々の怪談を語った妻の小泉セツさんの生涯をモデルにした物語です。本作の第2週目では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、借金まみれの松野家の働き手となってくれる婿を探しています。

 一度お見合いをするも、障壁となったのが、松野家の父「司之介(演:岡部たかし)」と祖父「勘右衛門(演:小日向文世)」が、1886年になっても武家としての誇りを捨てずに髷(まげ)を結っている点です。8話でお見合いが破談になった後、トキは「やるなら人のためになって 人に好かれて 人に迷惑かけない武士やってよ」と怒りをあらわにします。

 そして、第9話では娘の幸せを優先した司之介が髷をそり落とすも、2回目のお見合い相手である鳥取の旧士族「山根家」の親子は、まだ髷を結っていました。「切るんじゃなかった」と後悔する司之介は、「落ち武者」扱いされてしまいます。一連の流れは視聴者の笑いを誘い、X(旧:Twitter)で「落ち武者」がトレンド入りしました。

 司之介はトキのために髪形を変えましたが、より「武士」であることにこだわっている勘右衛門が、今後髷を落とすことはあるのでしょうか。資料を見てみると、彼の「モデル」である人物は、波乱の時代を生き抜いたこともあって、ずっと侍としての生き方を曲げなかったといいます。

 トキのモデルである小泉セツさんは、1868年2月、生後7日で生家の小泉家から子供のいなかった稲垣家に養子に出されました。稲垣家はもともと松江藩から100石の禄を貰っていた武家で、悪くない生活をしていたのですが、明治維新後に養父の金十郎さんが商売を始めて失敗し、先祖代々の家を失うほど没落したそうです。

 養祖父の万右衛門さんはセツさんが稲垣家に来たとき満50歳で、セツさんが3歳の時点で隠居しています。彼は生涯にわたって、昔ながらの武士としてのスタイルや気位を捨てなかったそうです。

 激動の幕末の時代を生きた万右衛門さんは、1853年にマシュー・ペリー提督が浦賀に艦船4隻で現れたいわゆる「黒船来航」のあとには、隠岐で異国船を見張る任に就き、1863年に江戸幕府第14代将軍の徳川家茂公が上洛した際は、京都の二条城や御所の警護に当たりました。また、1864年に四国連合艦隊(イギリス・フランス・オランダ・アメリカ)による下関砲撃事件が起きたときには、松江藩の砲術方頭取として島根西岸にあった西洋式砲台に派遣されています。

 そんな歴戦の侍である万右衛門さんは、セツさんが婿に迎えた前田為二さんという旧士族の男性に対して、武家の家風に合わせるよう厳格に接したそうです。為二さんは稲垣家が多額の借金を抱えていたこともあり、将来を悲観して結婚から1年ほどで出奔してしまいました。

 万右衛門さんがモデルとなれば、勘右衛門は今後も武士の格好を貫きそうです。また、第1話で松野家が「丑の刻参り」をした際、勘右衛門が明治政府だけでなく、ペリー提督まで呪っていたのも納得がいきます。

『ばけばけ』公式ガイドブックの小日向文世さんのインタビューを読むと、今後は勘右衛門がトキの夫となる「レフカダ・ヘブン(トミー・バストゥ)」を、「ペリー」と呼んで木刀で襲う場面もあるそうです。これからも彼から目が離せません。

※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『セツと八雲』(著:小泉凡/朝日新聞出版)

(マグミクス編集部)

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