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ベビィマリオに翻弄された『マリオテニス64』 幼稚園児でもプレイ可能!?

2000年7月、NINTENDO64用ソフト『マリオテニス64』が発売されました。3Dポリゴンを用いた”マリオ”と冠する初めてのテニスゲームです。リリースされ続けている「マリオテニス」シリーズの根幹が作られました。

テニスの駆け引きを教えてくれたゲーム

『マリオテニス64 任天堂公式ガイドブック』(小学館)
『マリオテニス64 任天堂公式ガイドブック』(小学館)

「幼稚園児でも遊べるテニスゲーム」。

 これがNINTENDO64用ソフト『マリオテニス64』に対する、筆者なりのキャッチコピーです。まだ小学校にも通っていなかった当時の筆者に、本作は”テニスの駆け引き”が何たるかを、ゲームを通して教えてくれました。

『マリオテニス64』がリリースされたのは2000年7月21日。ちょうど次世代機「ゲームキューブ」が世におくり出される約1年前のことです。任天堂のテニスゲームはファミコンの『テニス』(1984年)をはじめ、バーチャルボーイでプレイできた『マリオズテニス』(1995年)など、既に何作か店頭に並んでいましたが、3Dポリゴンを用いた”マリオ”と冠するテニスゲームは本作が初めて。タイトル画面を見てみると、テニスラケットを構えた「マリオ」と「ルイージ」に加え、「ピーチ姫」や「クッパ」、「ヨッシー」に「ドンキーコング」といった任天堂の人気キャラクターが集結しており、「これは何だか凄そうだ!」とプレイ当時に感心していたのを覚えています。

 そんな本作の特徴と言えば”ショットの打ち分け”。複雑なコマンドを入力せずとも、AボタンとBボタンの組み合わせにより、返球時に数種類のショットを打ち返すことができました。

「トップスピン」は山なりの弾道を描く、比較的オーソドックスなショット。一方の「スライススピン」はやや低い弾道を保ちつつ、コート上での跳ね返りも控えめです。この2種類を軸とし、相手の頭上を飛び越えるような「ロブ」、ちょうどネット付近へ落下する「ドロップショット」を、相手のポジションを考慮して使い分けるのが王道のプレイスタイル。「マリオテニス」シリーズは2020年7月現在にいたるまで作品数を重ねていますが、この基本的な部分は『マリオテニス64』の時点でおおよそ確立されていたように思います。

強みの異なる個性豊かなキャラクター

 マリオはそつなくこなすオールラウンダー、ヨッシーは身動きの素早いスピードタイプ……と、キャラクターごとに性能の違いが見られたのも特筆すべきポイントです。例えばマリオの宿敵であるクッパは、巨大な体躯からあふれ出る力を活かしてサーブやスマッシュを豪快に叩き込みます。そのクッパに毎度さらわれることでおなじみのピーチ姫は、返球時のコントロール力に長けたテクニックタイプ。さらに脇を固めるキャラクター陣も魅力的な個性を発揮しているものが多く、プレイヤーの好みに合わせて計16名ものキャラクターをチョイスすることができました。

 なかでも極めて強力だったのは「ベビィマリオ」。一見すると身長が低く、手足の短さからリーチ面も心もとなく思えますが、コート上をタッタッタッと駆け抜ける身のこなしは郡を抜く軽やかさ。また低身長ゆえに放たれる弾道の低いスマッシュも、一種の必殺技に値するといっても過言ではなかったのです。筆者の周りではベビィマリオをはじめ、空中に留まったままショットを打ち返せる「パタパタ」、他のキャラクターと比べて変化球にクセのある「テレサ」といった、トリッキーなキャラクターが多く採用されていました。

 今でこそ登場キャラクターのほとんどがド派手な必殺技を発動し、演出上の華やかさが倍増した「マリオテニス」シリーズ。今回取り上げた『マリオテニス64』はそうした独自の必殺技も実装されておらず、見た目は少しばかり地味だったのかもしれません。とはいえ先述の通り、シリーズの根幹はこの頃から健在だったのです。スマッシュを叩き込む爽快感、マッチポイント突入時の緊張感、そして”MAX”状態のCPUを倒した際の達成感……。当時を懐かしむ思い出補正を抜きにしても、本作はスポーツゲーム史に残る名作だと確信しています。

(龍田優貴)

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