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『未来少年コナン』自然豊かなラナの故郷 宮崎駿監督の“理想郷”ハイハーバーとは?

宮崎駿監督が思い描いた理想郷

ハイハーバーに迫るモンスリー 画像は『未来少年コナン』DVD第5巻(バンダイビジュアル)
ハイハーバーに迫るモンスリー 画像は『未来少年コナン』DVD第5巻(バンダイビジュアル)

 穏やかな気候で、畑には小麦が実るハイハーバーを、人工都市インダストリアとは対照的なユートピアとして、宮崎駿監督は描いています。インダストリアのようなハイテク機器は残っていませんが、村人たちはのんびりと平和そうに暮らしています。

 ハイハーバーでは大人も子供も、みんな働いています。ラナをはじめとする女の子たちは機織りをし、大人の男たちは鍛冶仕事などに汗を流しています。そして、畑の小麦が実ると村人総出で麦刈りに勤しみます。原始共産制に近い形で、村は運営されています。

 自然と人間との営みが調和したハイハーバーの暮らしは、高畑勲監督と宮崎駿監督とのタッグ作『アルプスの少女ハイジ』(フジテレビ系)を思わせるものがあります。ハイハーバーでの生活を体験し、コナンはいつか「のこされ島」に戻り、ハイハーバーのような平和な社会を築くことを考えるようになります。ジムシーも動物を狩猟するのではなく、育てることを学びます。

 また、宮崎駿監督はハイハーバーを完璧な社会としては描かずに、平和に慣れてしまった村人たちはオーロのような不良児を野放しにしてしまうなどのマイナス面にも触れています。そんな課題点を含みつつも、ハイハーバーは宮崎駿監督が作品のなかで具体的に描いてみせた「理想郷」のように思えます。

かわいかった少女時代のモンスリー

 比較的のどかなエピソードが続く「ハイハーバー」編ですが、第17話「戦闘」からはモンスリー(CV:吉田理保子)率いるインダストリアからの武装部隊がガンボートに乗って、ハイハーバーに迫ります。インダストリアの火力の前に、戦いに慣れていないハイハーバーはあっけなく陥落します。でも、ハイハーバーを武力支配するモンスリーにも、心境の変化が起きるのです。

 インダストリアでは人工食料しか口にしていなかったモンスリーは、ハイハーバーで育った小麦で焼いたパンやお茶のおいしさに驚きます。ハイハーバーの穏やかな風を感じながら、愛犬と戯れながら育った幸せな少女時代を思い出すモンスリーでした。回想シーンに登場する少女時代のモンスリーが、すごくかわいいのにも注目です。自然豊かな村での生活が、旧世代の大人たちへの憎しみに駆られていたモンスリーの心を溶解していくことになります。

 そして自然災害の恐ろしさを、宮崎駿監督が見事な演出力で描いてみせたのが、第19話「大津波」です。この回を見て、津波の恐ろしさを知った人も多いのではないでしょうか。理想郷ハイハーバーも、戦火や大自然の脅威に次々とさらされることになるのです。

 宮崎アニメの魅力が詰まった『未来少年コナン』のなかでも、「ハイハーバー」編は宮崎監督の理想世界が描かれた興味深いパートとなっています。前時代の遺物である巨大爆撃機ギガントが復活するクライマックスを控え、コナン、ラナ、ジムシーたちのキャラクターの内面が実に丁寧に描かれた「ハイハーバー」編にぜひ注目してください。

(長野辰次)

【画像】野生児・ジムシーにも恋の予感?

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