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『ばけばけ』路上で暮らすタエ様たちが危ない? ヤバすぎた明治23年・松江の冬 「1週間吹雪」「積雪が1.5m」

連続テレビ小説『ばけばけ』第6週では、松江にもうすぐ冬が迫っていることが示唆されました。

寒さが苦手だったラフカディオ・ハーン

『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)
『連続テレビ小説 ばけばけ Part1 NHKドラマ・ガイド』(NHK出版)

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。

 第6週30話の最後では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫である松江中学の英語教師「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中になる決意をしました。借金を抱えて長年苦しむ養家の松野家の人びとや、第6週で物乞いをしていることが発覚した実母「雨清水タエ(演:北川景子)」、弟の「三之丞(演:板垣李光人)」を救うためです。

 最初は女中の話を断ったトキが急いで依頼を受けたのは、時期的に冬が近づいていたことも大きいと思われます。30話では寒さをしのげるとは思えない貧乏長屋に住む松野家の家族たちが、一斉にくしゃみをする場面もありました。

 西日本とはいえ、山陰地方の冬はかなり寒く、島根県にはスキー場も多数あります。トキの元夫「山根銀二郎(演:寛一郎)」が語った怪談「鳥取の布団」も、鳥取に住む貧しい兄弟が凍死したことが発端の物語でした。

 特に、ヘブンのモデルであるラフカディオ・ハーンさんが来日したばかりの1890年から1891年にかけての冬は、異常な冷え込みだったそうです。この厳しい冬は、『ばけばけ』の今後の物語に大きく関わってくるかもしれません。

※ここから先の記事では『ばけばけ』のネタバレにつながる情報に触れています。

 当時の異様な寒さについては、ヘブンの同僚で通訳でもある「錦織友一(演:吉沢亮)」のモデル、西田千太郎さん(松江中学の教頭)が記した日記からも分かります。1891年1月14日からは吹雪が1週間も続いたそうで、西田さんは日記に「寒威積雪共に近年稀有なり」と記していました。また、ハーンさんも東京にいる日本学者の友人、バジル・ホール・チェンバレンさんへの手紙で、最初の吹雪で5フィート(約152cm)もの雪が積もったことを語っています。

 この寒さによってハーンさんは1891年の1月中旬に肺を病み、1週間以上も寝込んだそうです。また、もともと身体が弱かった西田さんも、1月27日から2月11日まで、学校を欠勤したという記録があります。そして、トキのモデル・小泉セツさんがハーンさんの家で女中として働き始めたのも、この2月頃だったそうです。

 セツさんはハーンさんが亡くなってから10年後に発表した「思い出の記」という手記で、彼がかなりの寒がりだったことを語っていました。ハーンさんは長年アメリカ南部のルイジアナ州ニューオーリンズや、西インド地方の仏領マルティニーク島で過ごしていたため、寒さへの耐性がなかったといいます。

「思い出の記」には、当時の松江にはまだストーブがなく、職場の松江中学にも火鉢しかなかったため、ハーンさんが大層困ったことが語られていました。ハーンさんは、大好きな『古事記』の舞台である「神々の国」・松江のことはとても気に入っていたものの、この寒さに耐えかねて、熊本の高等学校への転勤を決めたそうです。そして、1891年11月に妻のセツさんと彼女の養父母らを連れて、松江を去りました。

『ばけばけ』でも今後、大吹雪が1週間も続くような厳しい冬が訪れるのでしょうか。そうなると住む家もないタエたちや、ぼろ長屋住まいの松野家の人びとも危険です。

※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(著:田部隆次/中央公論新社)

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ! 夫婦で立って並ぶと「なんか小っちゃくてかわいい」 コチラが小泉八雲さん(ギリシャ人)と小泉セツさん(日本人)の身長差です

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