『ばけばけ』31話、トキに史実通りの「失礼&セクハラ」発言をしたヘブン先生 今後フォローはあるのか
朝ドラ『ばけばけ』では、レフカダ・ヘブンからトキへの失礼な発言が話題を呼びました。こちらは小泉八雲さんと小泉セツさんの実話に基づいているようです。
ラフカディオ・ハーンも手足の太さに関して「小言」を言っていた?

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツ(節子)さんがモデルの物語です。
第30話では主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫である松江中学の英語教師「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中になることを決意しました。しかし、31話では士族の娘の女中を希望していたヘブンがトキに対し「ブシムスメチガウ!」と言い出し、断られそうになります。
彼がトキを武家の娘ではないと言ったのは、彼女の手足を太いと思ったからでした。トキはその理由を聞いて、失礼だと怒ります。しかし、同僚の「錦織友一(演:吉沢亮)」が、トキがかつてヘブンに襲い掛かってきた侍、「松野勘右衛門(演:小日向文世)」の孫だと説明すると、彼は「スバラシイ」と態度を変え、その場でトキに月給の20円を渡しました。
ヘブンの失礼な発言や、トキに着物をまくらせて手足を見る行為に、SNSでは
「『ウデ、アシ、フトイ。』って、そこわざわざ日本語で言うのやめて」
「ヘブンが浴衣姿で面接してるのも(他意は無さそうだが)日本の感覚ではだらしなく失礼だし、女中の『仕事』を邪推してしまう」
「アメリカで女中を雇うなら、氏素性を調べるのはともかく、脚見せろ、とか言わないだろ。見下している。錦織さんもそれは失礼だって抗議すべし」
「ヘブン先生、誤解もそやけど、手足を太いなんて失礼な事を言った事や、そこを見せさせるという、セクハラも、謝ってごしなさいな」
「トキの手足は十分細いけど、イメージしてたのは筋肉とかないような感じの手足なのかな」
「高石あかりことおトキちゃんの手足、太い? めちゃくちゃ細いし、なんだったら朝ドラヒロインのなかでもかなり細い方に入ると思う」
といった反応が相次いでいます。
ヘブンのモデル、ラフカディオ・ハーンさんも、1891年2月頃に小泉セツさんが女中としてやってきた際、彼女の手足が太いことを指摘したそうです。『松江に於ける八雲の私生活』という書籍には、ハーンさんが松江に着いてから泊まっていた冨田旅館の女将、ツネさんの証言が載っています。
ツネさんによれば、ハーンさんに士族の娘の女中を世話したいといったのは錦織のモデル・西田千太郎さん(松江中学の教頭)だそうで、彼女はさまざまな人を探した結果、「士族の名家のお嬢さん」であるセツさんを選んで推薦したそうです。しかし、ハーンさんは下記のような反応を示しました。
「ご同棲の翌日、私ははじめて京店のお宅に伺いますと、節子様の手足が華奢でなく、これは士族のお嬢様ではないと先生は大不機嫌で、私に向ってセツは百姓の娘だ、手足が太い、おツネさんは自分を欺す、士族でないと、度々の小言がありました」(『松江に於ける八雲の私生活』のツネさんの証言より抜粋)
その後、ツネさんの説明もあって誤解は解け、セツさんは女中として働きはじめます。そして、1891年の夏頃、ハーンさんとセツさんは夫婦になりました。
ふたりの長男・小泉一雄さんによる著書『父小泉八雲』には
「父は初めの頃、母の手を見て、その荒れているのを傷ましがり、気恥しがるその皸(あかぎれ)のされた手を父は自分の白い柔い掌でさすりつつ『あなたは貞実なひとです。この手その証拠(しるし)です』と云って労った事を母は屡々(しばしば)語っている」
「後年、父もまた私へ、これに言及した事がある。ママの手足の太いのは少女時代から盛んに機を織った為だ。即ち親孝行からだと。この事はその後も母が毎度口にする自慢話の一つとさえなった」
と、書かれています。
ハーンさんは、最初は不満を示したセツさんのたくましい手足を、むしろ好きになったようです。ヘブンもいずれトキへの発言を謝り、優しさを見せてくれるのでしょうか。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『松江に於ける八雲の私生活』(著:桑原羊次郎/山陰新報社)、『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)
(マグミクス編集部)

