マグミクス | manga * anime * game

『ばけばけ』ヘブンがトキを「手足太い」と言ったのは実話通り ただ小泉セツは八雲を「微塵も悪い心のない人」と語っていた?

朝ドラ『ばけばけ』では、レフカダ・ヘブンからトキへの失礼な発言が話題を呼びました。こちらは小泉八雲さんと小泉セツさんの実話に基づいてます。セツさんは夫のことを「極正直者」「微塵も悪い心のない人」と評していました。

とにかく嘘をつかれるのが嫌いだったハーンさん

『ばけばけ』主人公のトキを演じる高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真
『ばけばけ』主人公のトキを演じる高石あかりさん。画像は「高石あかりファースト写真集 幻灯」(東京ニュース通信社刊)発売時の写真

 2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツ(節子)さんがモデルの物語です。

 第31話では、未来の夫である松江中学の英語教師「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中になることを決意した主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、ヘブンから「ブシムスメチガウ!」と言われてしまう、まさかの場面が描かれました。

 ヘブンがトキを士族の娘ではないと思ったのは、長年機織り工場で働いてたくましくなった彼女が太かったからです。31話ではヘブンがトキに着物をめくって手足を出させる場面もあったため、SNS上では「それはセクハラでは」「失礼すぎる」といった意見も出ていました。

 ヘブンは女中を求めた当初から、「ブシムスメ」を望んでいます。トキが自分に襲い掛かってきた元侍「松野勘右衛門(演:小日向文世)」の孫だと知ると、彼は怒るどころか「スバラシイ」と態度を変えていました。それだけ武士に憧れがあるのでしょう。

 ヘブンのモデル、ラフカディオ・ハーンさんも、自分の家に士族の娘の女中が来ると聞いて、華奢な女性をイメージしていたようで、小泉セツさんの手足が太いことに怒ったと言われています。ハーンさんが松江に着いてから数か月泊まっていた冨田旅館の女将で、女中探しを手伝ったツネさん(池谷のぶえさん演じる『ばけばけ』の花田旅館の女将「ツル」のモデル)は、『松江に於ける八雲の私生活』という本で

「ご同棲の翌日、私ははじめて京店のお宅に伺いますと、節子様の手足が華奢でなく、これは士族のお嬢様ではないと先生は大不機嫌で、私に向ってセツは百姓の娘だ、手足が太い、おツネさんは自分を欺す、士族でないと、度々の小言がありました」
 
 と証言していました。

 ただ、セツさんは当初失礼な発言もしたハーンさんに関して、後年記した手記『思い出の記』のなかで、

「私が申しますのは、少し変でございますが、ヘルンは極正直者でした。微塵も悪い心のない人でした。女よりも優しい親切なところがありました。ただ幼少の時から世の悪者共に苛められて泣いて参りましたから、一国者(頑固者)で感情の鋭敏な事は驚く程でした。」

 と語っています。幼い頃に両親のもと離れ、アメリカでもさまざまな苦労をしたハーンさんは、セツさんが『思い出の記』で「嫌いな物は、うそつき」と書くほど嘘をつかれるのを嫌ったそうです。セツさんの手足を見て怒ったのも、太いのが不満というより、「当初聞いていた話と違う=嘘をつかれた」と思ったのが主な理由かもしれません。

 そして、心優しいハーンさんは後にセツさんの手足がたくましくなった事情を知り、より彼女を好きになったようです。ハーンさんの長男・小泉一雄さんは、著書『父小泉八雲』のなかで、

「父は初めの頃、母の手を見て、その荒れているのを傷ましがり、気恥しがるその皸(あかぎれ)のされた手を父は自分の白い柔い掌でさすりつつ『あなたは貞実なひとです。この手その証拠(しるし)です』と云って労った事を母は屡々(しばしば)語っている」

「後年、父もまた私へ、これに言及した事がある。ママの手足の太いのは少女時代から盛んに機を織った為だ、即ち親孝行だからだと。この事はその後も母が毎度口にする自慢話の一つとさえなった」

 と語っていました。

 ちなみに、ハーンさんは武士へのあこがれがかなり強かったようで、彼はセツさんが女中として働き始めた1891年2月上旬から4か月後の6月22日に、それまでの借家から旧松江藩士の根岸家が住んでいた屋敷に転居しました。「庭のある侍の屋敷に住みたい」という、たっての希望だったそうです。

 この屋敷は、現在も観光名所として人気の小泉八雲旧居として残っています。また、『思い出の記』によれば、この根岸家の屋敷に引っ越した頃には、セツさんとハーンさんは夫婦関係になっていたようです(法的に正式に結婚したのは1896年)。

 31話で手足が太いと言われ、怒りをあらわにしていたトキですが、『ばけばけ』第1話ではヘブンと仲睦まじい夫婦になった姿が描かれています。ここからふたりにどのように恋愛感情が芽生えていくのか、要注目です。 

※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」

参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(著:長谷川洋二/潮出版社)、『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)、『父小泉八雲』(著:小泉一雄/小山書店)

(マグミクス編集部)

【画像】え…っ! そんな手足太かったの? コチラが実際の「小泉セツ」さんの写真です

画像ギャラリー

マグミクス編集部関連記事

もっと見る

編集部おすすめ記事

ドラマ最新記事

ドラマの記事をもっと見る