『ばけばけ』三之丞のせいで物乞い止められそうにないタエ様 史実だと小泉セツの実母はいつ頃「保護」された?
NHK連続テレビ小説『ばけばけ』では、主人公・トキが三之丞に生活費を渡したにもかかわらず、実の母・タエがまだ物乞いを続けています。
三之丞、「口止め料」渡してる場合じゃないって

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツ(節子)さんがモデルの物語です。
第31話では主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中としてもらった月給20円のうち10円を、生家の雨清水家の弟「三之丞(演:板垣李光人)」に渡しました。
トキは三之丞にそのお金で物乞いをしている実母「タエ(演:北川景子)」と一緒に、まともな生活をしてほしいと言います。しかし、三之丞は金を貰ったことをタエに話さず隠してしまいました。33話では、トキがまだ物乞いをしているタエを目撃し、彼女は激しいショックを受けています。
※ここから先の記事では、『ばけばけ』のネタバレにつながる情報に触れています。
発表されている34話のあらすじを見ると、「松江新報」の記者「梶谷吾郎(演:岩崎う大)」が物乞いのタエを取材しに来た際、三之丞が母を守るために、梶谷にトキからもらった生活費の一部を口止め料として渡すそうです。
母を守りたいのであれば、早くまともな家を借りて住んでほしいところですが、三之丞には何か考えがあるのでしょうか。現状、タエは物乞いをやめられそうにありません。
劇中では松江に冬が迫っていることも説明されており、このまま破れ寺で暮らしていてはタエたちは凍死してしまうでしょう。記録によると、1890年から1891年にかけて、松江には異常な厳冬が訪れたそうで、吹雪が1週間続き積雪が1.5mにも達したといいます。
史実では、トキのモデル・小泉セツさんは1891年2月頃に英語教師として月100円の給与を貰っていたラフカディオ・ハーンさんの女中となり、同年の8月頃に彼と夫婦になったそうです。
そして、セツさんは、物乞いをして食いつないでいた実母・チエさんに仕送りをし、彼女に人並みの生活を取り戻させました。チエさんは、晩年は大阪で暮らしたそうです。彼女はいつ頃、物乞いの生活から「保護」されたのでしょうか。
歴史家の長谷川洋二さんによるセツさんの評伝『八雲の妻 小泉セツの生涯』によると、ハーンさんとセツさんは1891年6月22日にそれまで住んでいた借家から、松江市の北堀町にある旧松江藩士の根岸家が住んでいた屋敷(現在の小泉八雲旧居)に転居しました。
そしてその少し前、チエさんは実家の塩見家の屋敷もあった松江市の「殿町」と呼ばれる市の中央部に小さな家を借りてもらい、家財道具も手配されて普通の生活を再開したそうです。チエさんが冬をどうしのいだのかは不明ですが、セツさんの養家・稲垣家の長屋に住まわせてもらっていたのかもしれません。
ちなみに、1891年6月28日に発売された山陰新聞の記事には、チエさんについて「乞食と迄に至りし」と書かれていました。三之丞は梶谷にお金を払ってまでタエが物乞いをしていることを隠したいようですが、いずれ報道されてしまうのかもしれません。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)
(マグミクス編集部)
