『ばけばけ』勝手に「洋妾」用意されてマジギレのヘブン先生 小泉八雲は来日後いきなり「まさかの場所」に連れてかれた?
連続テレビ小説『ばけばけ』では、トキがヘブンの「洋妾」ではないことが確定しました。そして、勝手に錦織たちに妾を用意されたと分かったヘブンは、激怒しています。
怒りのあまりトキに失言も

2025年後期のNHK連続テレビ小説『ばけばけ』は『知られぬ日本の面影』『怪談』などの名作文学を残した小泉八雲(パトリック・ラフカディオ・ハーン)さんと、彼を支え、さまざまな怪談を語った妻の小泉セツさんがモデルの物語です。
第7週34話では、主人公「松野トキ(演:高石あかり)」が、未来の夫「レフカダ・ヘブン(演:トミー・バストウ)」の女中として働いていることが、松野家の家族たちにばれてしまいました。ヘブンから月20円もの大金を貰っていたトキは、自分が単なる女中ではなく夜の相手もする「洋妾(ラシャメン)」だと思っており、それを話してしまいます。
松野家の面々は当然怒りますが、ヘブン本人はトキを本当にただの女中として雇っているつもりでした。同僚の「錦織友一(演:吉沢亮)」ほか、周りの人間が勝手に勘違いして、彼に洋妾を世話しようとしていたのです。
誤解されていたことを知ったヘブンは、錦織に「ふざけるな!」「私をそんな男だと思っていたのか!」と激怒し、さらにトキのことを「ダキタクナイ」と失礼な発言もしてしまいました。何はともあれ、トキは今後普通の女中として働きながら、毎月20円もの大金が手に入るようです。
モデルの小泉セツさんは、1891年2月頃からラフカディオ・ハーンさんの家で住み込みの女中として働き始め、月15円の給金を貰って養家の稲垣家、生家の小泉家の人びとを養っていました。そして、セツさんとハーンさんは1891年の8月頃には夫婦となり、1896年にハーンさんが帰化して小泉八雲に改名する形で、正式に結婚しています。
現存している書簡や新聞などでは、1891年頃のセツさんをハーンさんの「妾」として書いているものもありますが、実際のところどうだったのかは分かりません。
ふたりの長男である小泉一雄さんは著書『父小泉八雲』のなかで、ハーンさんが妾としてセツさんを雇ったという言説を否定し、
「日本へきて初めて教育家の地位に置かれた彼は、その地位をかなり重視して軽はずみはしていないはずだ」
「『旅の恥はかきすて』という日本には悪い諺がある。(中略)父はこれを絶対にせぬ人である」
「旅先においては特に紳士的となる人であった。それなればこそ、どこの旅先でも敬愛されたのである」
と語っています。
『父小泉八雲』によれば、ハーンさんはアメリカから日本にやってきた1890年4月4日の初日、横浜に上陸してすぐに町を見物しようと乗った人力車の車夫が、いきなり彼を遊郭に連れていこうとしたため、激怒して引き返させたそうです。その後、彼はチャーというニックネームの正直者の車夫を雇い、横浜中の寺を見て回りました。
また、アメリカにいた頃にも、有名な記者だったハーンさんを信奉し、たびたび家に招待したり、さまざまな物品を渡してきたりする夫人がいたそうですが、彼は「変な噂など立てられたくありません」と彼女を遠ざけたといいます。
やはり、ハーンさんは大金を積んで妾を用意させるような人間ではなかったようです。
ちなみに、現状発表されている『ばけばけ』第8週36話のあらすじを見ると、ヘブンは錦織らの勘違いのせいで広まった「洋妾」の噂のせいでトキに対して気まずさを感じ、彼女をクビにしようとすると語られています。ハーンさんが避けていた「変な噂」が立ってしまった状況を、トキとヘブンがどう乗り越えるのか、今後も目が離せません。
※高石あかりさんの「高」は正式には「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『父小泉八雲』(小山書店)
※本文の一部を修正しました(2025年11月13日14時46分)
(マグミクス編集部)
