『コクリコ坂から』に潜む歴史の闇 宮崎吾朗監督が抱える、逃れられない呪いとは?
スタジオジブリの長編アニメーション『コクリコ坂から』が、「金曜ロードSHOW!」でオンエアされます。1960年代を生きる高校生の海、俊たちの青春がまぶしく描かれた作品です。デビュー2作目となる宮崎吾朗監督の成長ぶりを感じさせる一方、企画・脚本を担当した父・宮崎駿氏の存在もやはり作品に大きな影響を与えたようです。
ファンタジーではないジブリアニメ
スタジオジブリの人気劇場アニメ『コクリコ坂から』(2011年)が、4年ぶりに地上波で全国放映されます。放送枠は2020年8月21日(金)の「金曜ロードSHOW!」(日本テレビ系)です。宮崎吾朗監督のデビュー2作目となる本作は、興収44.6億円のヒットを記録。宮崎吾朗監督の父親である宮崎駿氏は、企画・脚本を担当しています。
建設業界出身、アニメーター経験のなかった宮崎吾朗監督に対して、デビュー作『ゲド戦記』(2006年)では「二世監督」という厳しい声も出ましたが、興収76.9億円という結果を残しました。『コクリコ坂から』はスタジオジブリらしさを感じさせつつ、それまでのジブリにはなかった新しさも吹き込まれた作品となっています。
宮崎駿作品はSFやファンタジーものが多かったのですが、『コクリコ坂から』は高校生の男女を主人公にした青春・恋愛ものです。学生運動が華やかだった1960年代を舞台にしているため、現代から見れば一種のファンタジーのように思える世界ですが、ジャンル的には非ファンタジー作品となっています。
少女マンガ原作ならではの驚きの展開
主人公となるのは、横浜で暮らす高校2年生の海(CV:長澤まさみ)。船乗りだった父親は、海が幼い頃に亡くなっています。母親は大学助教授をしており、家にはほとんどいません。海は下宿生たちのために朝ご飯の準備や洗濯をするなど、寮母のように忙しく働いています。いかにもスタジオジブリらしい、明るく健気なヒロインです。
そんな海は、高校に昔からある文化系の部室棟「カルチェラタン」の存続運動をめぐって、学生新聞を発行する高校3年生の俊(CV:岡田准一)と知り合い、お互いに惹かれるものを感じるのでした。海の自宅で開かれるパーティーに俊も参加し、いいムードになるふたりです。ところが、海が亡くなった父親の写真を見せたところ、俊は顔をこわばらせるのでした。
急によそよそしくなった俊の態度に、海は戸惑います。少女マンガ原作(原案:佐山哲郎、作画:高橋千鶴)ならではの驚きの展開に加え、海の自宅の下宿人たち、カルチェラタンを守ろうとする同級生たち、さらに出版社を経営する徳丸理事長(CV:香川照之)など、個性豊かなキャラクターたちがドヤドヤと登場する、賑やかなドラマとなっています。