“蚊”になって人間の血を吸う珍作ゲームをご存知? プレステ2用ソフト『蚊』
“蚊”の活動が活発になるのは、実は真夏ではなく9月頃。2001年に発売されたプレイステーション2用ソフト『蚊』で、蚊の気持ちを味わってみるのも一興かもしれません。
実は9月下旬に吸血活動が盛んになる“蚊”
コロナ禍に加え、記録的な大雨や猛暑などが続き、なかなか気分が晴れなかった2020年の夏。他に、身近な「鬱陶しい夏の代名詞」として思い浮かぶのが、「蚊による虫刺され」ではないでしょうか。
“蚊”に刺される時期のイメージとしては、7月~8月の“夏”を思い浮かべる方も多いと思います。実はこれから先、9月下旬くらいがピークとのこと。10月の産卵時期に備え、栄養を蓄えるために吸血活動が盛んになるそうなので、まだまだ油断は禁物。ちなみに人間や動物の血を吸う蚊は産卵をするメスのみだそうです。
そんな“蚊”の吸血活動を題材としたゲーム……それが2001年にソニーコンピューターエンターテイメントから発売されました。表題はストレートに『蚊』というそのまんまのもので、これは日本で一番短いゲームタイトルとして知られています。
ゲームの内容はプレイヤーが“蚊”となり、人間の血を吸うというもの。“敵”となるのは「山田家」という三人家族。父・健一と母・カネヨ、そして娘の麗奈というターゲットの血をそれぞれのステージで吸っていくのですが、やはりそこはゲーム。どこにでもとまって自由に「吸血」できるというものではなく、赤くマーキングされている「吸血ポイント」にロックオンしてからターゲットに突撃。人間の「ストレスメーター」に注意しながらグリグリと右スティックで吸血していく、という流れになっています。
もちろん、すべてのゲーム画面が“蚊”の目線ゆえ、普通のお茶の間もなかなかに壮大な空間になっています。そして、簡単に“血”を吸わせてくれないのもこのゲームの面白さ。主人公の“蚊”は、時に電源のスイッチや携帯電話、風鈴などに「突撃」し、人間を動かして「吸血ポイント」を出現させなければなりません。また、無防備に人間の顔付近で飛んでいて気付かれると「バトルモード」に突入。“蚊目線”で見ると大巨人サイズの山田一家と闘う羽目になります。この際はターゲットに出現する「リラックスポイント」にアタックして戦闘を解除しなければなりません。
ちなみにこの『蚊』、ステージは12面で構成されており、最初は娘、麗奈の部屋や母・カネヨがアルバムを探す物置、父・健一の居間などさまざまなステージでバトルが展開されていきます。やはりクリアするごとに難しくなっていくのはゲームの常。部屋に蚊取り線香を炊かれたり、バルサン的な燻煙式殺虫剤などが設置されたり、お風呂でのバトルやラストには時間制限があったりするのですが、ステージ10以降の山田一家はかなりの強敵。油断しているとソッコーで叩き潰されてしまう点も“虫”ならではの哀愁を誘います。
ともかくこのゲームがどんな会議を経て発売に至ったのかも気になるポイントなのですが、やはりそこは累計で1億5500万台を売り上げた「史上最も売れたゲーム機」といわれるプレイステーション2。分母が大きい分、当時はソフトも、この『蚊』のように意欲的かつ楽しい「ネタゲー」も多かったような気がします。ちなみにこの『蚊』は累計で16万本を売り上げ、2003年にはあろうことか『蚊2 レッツゴーハワイ』という続編までが発売されています。こちらの企画会議も、どんな様子だったのか気になるところです。
振り返ってみると、この『蚊』のような名(迷)作、珍作が目白押しだったプレイステーション2のソフトたち。現在はプレイステーション・アーカイブスでこの「蚊」シリーズも配信されています。産卵に備えた吸血活動が盛んになる9月下旬に向けて、再びこのゲームを楽しんでみるのも一興ではないでしょうか?
(渡辺まこと)