マンガ『死んだ彼氏の脳味噌の話』のQuqu先生、普遍的テーマ「愛」の一歩先を描く
『死んだ彼氏の脳味噌の話』……強いインパクトのタイトルを冠した同書は、SNSで多くの共感を集めたマンガに描き下ろしエピソードを加え、「愛することとはなにか?」を読む者に問いかける近未来短編集です。作者のQuqu先生にお話を聞きました。
好きでいる「理由」がなくなっても愛せるかどうか?
恋人と付き合っているのは、相手が自分を喜ばせてくれて、自分が好きな要素を持っているから。子供をかわいいと思うのは、自分にとって嬉しい行動をしてくれる良い子だから。そういった「○○だから」の部分が対象から無くなった時、自分はどうするのか……皆さんは考えたことはありますか?
マンガ『死んだ彼氏の脳味噌の話』(KADOKAWA)は、”本当の愛とはなにか”を近未来の不思議な技術を通して描いた作品。SNSで大きな反響を集めた7つの短編マンガに26ページの描き下ろしエピソードを加えた短編集として発売されています。作者のQuqu先生に聞きました。
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――『死んだ彼氏の脳味噌の話』は、「愛」というテーマが主軸となり、それぞれの物語のつながりが感じられます。一連のエピソードをどのように発想されたのでしょうか?
Ququ先生(以下、敬称略) 今回の短編集では、どの話も一貫して「愛することができるか」という「愛の可能性」がテーマになっています。
「愛の可能性」は、自分自身の永遠のテーマでもあり、Twitterで発表可能な20ページ程度の短編で、幅広い層の方に刺さる物語を考えた結果、たどりついたテーマでもありました。
各話の構想にあたっては、「愛することができるか」という問いから産まれる不安が発生するような関係性、場面を考え、SF的に誇張する……という作り方をしていましたが、「確かにそういう葛藤が生まれうる」というリアルさを損なわないようにするのが大変でした。
――作中にはSF要素を感じさせる「架空の技術」がいくつか登場しますが、どれもユニークな機能ばかりです。それらの「技術」について、着想のもとになったものはありましたか?
Ququ 作品によって発想の仕方はまちまちでした。「愛の可能性」を一貫したテーマにすることは決めていたので、そういった問いを発生させるような技術はどのようなものか……と考えることで生まれた製品もあり、「よいこくん」はその典型です。「良い子じゃなくなっても愛せるのか」という問いを直接的に生成する仕掛けになっています。
「元カレと三角関係」は、恋人同士を描こうという発想から始まり、自分を好きなはずの彼女が、自分と合わないタイプの元カレと自分を比較することがあるならそれはどんな場面か……と考えたところ、元カレが瀕死というアイデアが出てきて、もともと知っていたALS患者の方向けの分身ロボットから技術の着想を得ました。
「ケイタ」はまた違って、昔のペットロボットのサポートが終わるという記事から最初の着想を得たものです。完全に既存の製品からスタートしてテーマにつなげた話でした。