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マンガ『死んだ彼氏の脳味噌の話』のQuqu先生、普遍的テーマ「愛」の一歩先を描く

物語の核心に迫る、「技術」の作り手たちのエピソード

「架空の技術」は登場人物たちを一時は助けるが、やがて彼女らはそれぞれの答えを見つけて行動を起こしていく。『死んだ彼氏の脳味噌の話』より
「架空の技術」は登場人物たちを一時は助けるが、やがて彼女らはそれぞれの答えを見つけて行動を起こしていく。『死んだ彼氏の脳味噌の話』より

――人間の心とテクノロジーの関係について、どのようにお考えでしょうか?

Ququ 技術を使う側として考えた時、テクノロジーは何ができて何ができないかを規定するという意味で、その時々の制約条件という側面があると思います。そして、成すのが難しいこと=「有り難いこと」が尊いことだとすると、テクノロジーのあり方は、我々が「何を尊いと感じるか」という価値観に影響を与えるものと言うこともできます。その意味では、心は一定程度テクノロジーに規定されると考えています。

 一方で、どれだけテクノロジーが発達しようと、人間が人間の心を持つ限り「有り難い」ことはあります。その代表が愛すること、痛みを伴う場面でも他人を思いやることだと考えており、その思いがテーマ設定にもつながっています。

 登場人物たちは技術によってどのような環境に放り込まれようとも、人間関係を前に進めるために最後には自分の意思で行動していきます。私のそういう考えがそこに反映されているのかもしれません。

――単行本に書き下ろされた「結成」と最終話「世界は愛に溢れている」は「技術」を生み出した会社のエピソードで、ここを読むことで物語全体の背景や真相がわかる仕掛けになっています。同社の技術者・ショウコは人を愛することを知らない大人として描かれていますが、どのような人物像をイメージされたのでしょうか?

Ququ ショウコは、自分の技術なら成功できると確信している自信家で、問題意識より功名心や自分の夢が先んじてしまっており、また顧客の意見どころか仲間の意見にも耳を貸そうとしません。

 ベンチャー企業を立ち上げて起業する失敗の典型として、顧客のニーズを無視して求められていないものを作ってしまうことが挙げられますが、動機も手段も「自分のことだけ」になって失敗してしまう起業家……そんな人物をイメージして描きました。

――最後の結末をハッピーエンドと受け取るかどうかも読者に委ねられるような、余韻の残る物語でした。同作をまだ知らない読者や、記事を読んで興味を持ってくれた読者に向けて、ひとことメッセージをお願いします。

 実は、描き下ろしの物語だけは、他の短編の「愛せるか」という問いを包括したうえで、次の問いに進める話になっています。終わり方については複数案あり、編集担当者をはじめいろんな方の意見をいただきながら今の形になったのですが、結果としてとても良い終わり方になったと思っています。

「愛」という普遍的なテーマを扱った物語としては、今描けることは全部描き、さらに一歩踏み込んだという感じです。初の単行本で大げさですが、遺作になってもいいかなと思える本になりました。

 登場人物が直面する問いは、SF的に誇張されつつも、誰もが直面し得る問いとして描いています。登場人物の誰かは、あなたの鏡かもしれません。技術的な「もしも」だけではなく、人間関係として「もしも自分がこの状況だったら…」と想像していただき、いつもの人間関係から新しい何かを見つける機会になればとても嬉しいです。

(井上椋太)

【画像】心に空いた穴を埋めてくれる? 作中に登場する、近未来の技術・サービス(6枚)

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