『ばけばけ』では出てくる? 小泉八雲が帝大をクビになったおかげで出会えた「錦織のモデル」に似ていた人物とは
『ばけばけ』第24週では、ヘブンが職場の東京帝大をクビになったことが明らかになりました。史実では、モデルの小泉八雲は、この後に嬉しい出会いもあったそうです。
どちらも教育に関わった秀才

連続テレビ小説『ばけばけ』24週117話では、主人公「雨清水トキ(演:高石あかり)」の夫「雨清水八雲(レフカダ・ヘブン/演:トミー・バストウ)」が、東京帝国大学を解雇されたことが明らかになりました。モデルの小泉八雲(ラフカディオ・ハーン)も、1903年3月に帝大を辞めていますが、そのおかげで彼にとって嬉しい出会いもあったそうです。
1896年9月から東京帝国大学の英文科講師を務めていたハーンは、1903年1月に当時の学長・井上哲次郎から手紙で解雇通知を受け取りました。日露戦争勃発前、ロシアと一触即発の状態だった日本は軍事費を増やす一方で文教予算は削られており、東大にも月450円という高給取りであるハーンを雇う余裕はなかったようです。
その後、学生たちの間で留任運動が起き、井上はハーンの邸宅を訪れて、授業時間と俸給を3分の1にして大学に残ってもらうよう交渉します。しかし手紙ひとつで自分をクビにしようとした井上の姿勢に憤っていたハーンは、その提案を受けずに退職してしまいました。
その1年後の1904年2月、ハーンは早稲田大学から講師として招聘され、3月から週4時間の授業で年俸2000円という契約で働き始めます。
ハーンは、早稲田をかなり気に入ったそうです。それは当時早稲田の学長を務めていた人物が、『ばけばけ』の「錦織友一(演:吉沢亮)」のモデル・西田千太郎(松江中学の教頭心得)に似ていたことも関係していました。
松江随一の秀才と呼ばれた西田は、結核によって1897年3月に34歳の若さで亡くなっており、ハーンはたいそう悲しんだそうです。妻・小泉セツの回想録『思ひ出の記』には、ハーンが「あのような善い人です、あのような病気参ります、ですから世界むごいです、なぜ悪き人に悪き病気参りません」と嘆いたことが書かれています。
また、ハーンは「今日途中で、西田さんの後姿見ました、私の車急がせました、あの人、西田さんそっくりでした」と、東京で死んだ西田の「幻影」を見たと語ったこともあったそうです。
そんなハーンが親友・西田に似ていると言った当時の早稲田大学学長は、法学博士の学位を持ち、衆議院議員、貴族院議員、文部大臣などを歴任した秀才・高田早苗でした。前身・東京専門学校時代から、早稲田大学の発展に尽力した功労者のひとりである高田は、創立者・大隈重信が亡くなった後に同校の総長も務めています。
前述の『思ひ出の記』には、「(ハーンは)早稲田大学に参りました時、高田さんが、どこか西田さんに似て居ると云って、大層喜んでいました」と書かれていました。また、ハーンは高田の家に招かれた際、彼の妻が上品な日本語で「よく御出で下さいました」と迎えてくれ、感激したこともあったそうです。
早稲田大学のHPにある高田の青年時代の写真を見てみると、たしかに細身で精悍な顔付きが、どこか西田に似ています。彼は1860年生まれで、西田より2歳年上です。1904年当時、40代で学長を務めていた高田は、ハーンにとって病気にならず元気に年を重ねていた場合の西田に見えたのかもしれません。
『ばけばけ』は残り8話しかありませんが、これからヘブンが早稲田に行き錦織に似た人物に出会う、という展開はあるのでしょうか。スピンオフで見てみたい気もします。
※高石あかりさんの「高」は「はしごだか」
参考書籍:『八雲の妻 小泉セツの生涯』(潮出版社)、『小泉八雲 ラフカディオ・ヘルン』(中央公論新社)
(マグミクス編集部)

