新作『神奈月紫子』は集大成? 画業40年の赤石路代先生が描く、強い意志の人物たち
意志の強いキャラクターたちの集大成? 新作で登場の「紫子」
●『めもくらむ~大正キネマ浪漫~』
「月刊flowers」にて2018年から2020年6月号まで連載され、最終巻の6巻が先日発売されました。
舞台は大正9年。カフェで女給として働く乙香は、活動写真の脚本を書いている大鐘小六、兄の遺児である椿、そして活動写真のスター・東海林鷹男と出会い、無声映画の世界に飛び込むことに。乙香と鷹男は次第に惹かれ合う……しかし、乙香には秘密があって……?!
こちらの作品も、天才女優が主人公となっております。赤石先生は、この作品を「最初の映画女優って誰だろう、と思って調べたら男性だったので、これは描くしかない、と!」とおっしゃっています。つまり乙香は……。
また、この作品はラストまで読んでいただくと、違ったメッセージも受け取ることができます。災害によって衰退してしまうかもしれない文化。ラストは涙なしでは見られません。
鷹男が言い放つ、「あるかどうかもわからない未来なんかより今が大切だ」という言葉が、私の胸をついて離れません。こういった時期だからこそ読みたい作品です。
そして、新作『神奈月紫子の優雅な暇潰し』。
「人生は壮大な暇潰しだけど、美しく生きるもの」が信条の主人公・神奈月紫子が、世の悪事と対峙する姿を描く作品です。第1話から、清々しいほどの快活な姿が描かれています。
年齢不詳、ひとりで大豪邸に住みながら生きてきた紫子。そんな彼女のもとを訪れてきたのは、唯一の身寄りであった祖母である紫子の妹の緑子が亡くなり、奄美大島から紫子を頼りに出てきた少年・真白。ふたりの優雅な共同生活が始まる……。
さまざまな作品たちの「意志の強さ」を総結集した権化・紫子さんの登場です。信条から気持ちよく、これからどんな世の中の悪事をバッサバサ斬ってくれるのか楽しみです。
ただ、おそらく赤石先生のことですから、対峙する相手も憎めない相手が多そうですね…。
連載が始まった「月刊flowers」9月号は、画業40周年を迎えた赤石先生の仕事場の様子や歴代イラスト、インタビューに書き下ろしエッセイマンガと、豪華盛りだくさんで飾られています。この美しく儚くも強い、赤石路代の世界をどうかこれからも拝ませていただきたいと、切に思う今日この頃です。
(別冊なかむらりょうこ)