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『キングスナイト』FCではまだ新参だったスクウェア、TVCMを打ち出した意欲作

4人のキャラクターが最終ステージで合流

 ファミコンブームの時代には、おもちゃ屋さんが客引きのためにファミコンとTV、カセットを用意し、子供たちが自由に遊べる試遊台を設置していることがよくありました。筆者もたまに遊びに行くことがあったのですが、無料で『キングスナイト』を遊べるチャンスが訪れたのです。その日から、通い詰めることになりました。

『キングスナイト』は少年騎士のレイジャック、老魔術師のカリバ、一角獣のバルーサ、泥棒のトビーの4人がそれぞれ単独でステージをクリアし、最終ステージで合流してパーティを組んで決戦に挑む仕様となっていました。各ステージは縦方向に自動スクロールする形になっており、障害物のなかに大量のアイテムが隠されていました。貴重な勇者の魔法のパーツをはじめ集めなければいけないものはたくさんあるのでなるべく多くの障害物を破壊しなければならないのですが、自動スクロールにより障害物に押しつぶされてしまうこともあり、なかなか難しいゲームでした。アイテムがどこにあるのかを把握する必要がある、典型的な覚えゲーだったのです。

 試遊台と覚えゲー。今考えるとなんと無謀な挑戦だったのか。ある程度のやり込みにより数名はステージをクリアすることができましたが、最終ステージは全員がいないとクリアできない仕様となっていました。その頃はそれすら知らなかったため、攻略は最初から不可能に近い状態だったのです。

 しかし幸いなことに、『キングスナイト』は10月には攻略本が発売されたので購入し、試遊台の前で本を開いてプレイをしていました。今から考えるとカセットも持っていないのに攻略本を買い、後ろに人が並んでいるのにマップを広げてプレイするというのもちょっと必死すぎるエピソードです。我ながらドン引きせざるをえません。

 最終的にはクリアは何とかできましたが、その直後、『キングスナイト』は撤去され別のゲームへと置き換えられてしまいました。今改めて思うと、店の人は自分がクリアするまで待っていてくれたのかもしれません。現代であればもっとシビアに対応されてしまったとは思いますが、あのころはまだ昭和だったのです。

 昭和末期が良いところばかりとは言い切れませんが、少なくとも今よりは色々と余裕があり、融通が利く時代だったことは確かです。よく親に色々とねだっていた店だったので、多少は目こぼしをしてくれたのかもしれないなと、今になって思い返しています。

(早川清一朗)

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