『テネット』が日本でも大ヒット。いま見返したい「タイムリープの傑作」5選
現在公開中の映画『テネット TENET』は本格的な物理学をベースにした、斬新な時間逆行シーンが話題を呼んでいます。SF映画の世界では、これまでにもさまざまなスタイルでの時間旅行が描かれてきました。ユニークなアイデアによる「タイムリープ」を題材にした映画を振り返ります。
斬新なアイデアでファンを魅了した「時間旅行」映画
クリストファー・ノーラン監督のSFサスペンス映画『TENET テネット』(以下、テネット)が大ヒットしています。世界興収で2億5000万ドルを突破し、日本でも2020年9月18日から公開され、IMAXシアターを中心に好スタートを切っています。
名もなき男(ジョン・デイビッド・ワシントン)が人類滅亡の危機に立ち向かう『テネット』は、未来では時間を逆行できるシステムが開発された……という設定になっています。一方向にしか流れないエントロピーを逆流させることで、時間を逆行させるという発想です。ノーベル物理学賞を受賞したキップ・ソーン博士が科学監修として参加しています。
現実では不可能とされてきた時間旅行ですが、映画の世界ではこれまでに実にさまざまな方法で時空を飛び越えてきました。ユニークなタイムリープを描いたSF映画5本を紹介します。
自己暗示で時流をさかのぼる――『ある日どこかで』
最初に取り上げるのは、タイムリープものの古典『ある日どこかで』(1980年)。『スーパーマン』(1978年)で人気を博したクリストファー・リーヴ主演の恋愛ストーリーです。『007 死ぬのは奴らだ』(1973年)でボンドガールに扮したジェーン・シーモアが、ヒロインを演じています。
脚本家のリチャード(クリストファー・リーヴ)は、往年の舞台女優エリーズ(ジェーン・シーモア)の写真にひと目惚れしてしまい、エリーズが活躍した1912年へ時間旅行することを決意します。その方法とは、なんと自己暗示でした。当時の衣装を身につけたリチャードは、強く念じることで若き日のエリーズがいた時代へさかのぼることになります。
時空を超えた愛で結ばれるリチャードとエリーズですが、とても些細なことでリチャードの自己暗示はとけてしまいます。公開時はヒットしなかったものの、その後名画座などで繰り返し上映され、今も愛され続けている名作です。
無線機から懐かしい声――『オーロラの彼方へ』
人間をタイムリープさせることは難しいけれど、音声だけなら可能かもしれない。そう思わせるのが、『オーロラの彼方へ』(2000年)です。1999年のNYで暮らす刑事ジョン(ジェームズ・カヴィーゼル)が、父親の遺品のアマチュア無線機から懐かしい声を聴いたことから物語は始まります。
無線機から聴こえてきた声は、若くして亡くなった父親のフランク(デニス・クエイド)でした。太陽フレアの異常によって時空に歪みが生じ、父親が生きていた1969年と音声だけがつながったのです。
生きることに疲れていたジョンが、若いころの父親とのやりとりで励まされるシーンに、思わず目頭が熱くなります。声だけタイムリープするという発想は、作家・乙一氏の短編小説『Calling You』や新海誠監督の劇場アニメ『君の名は。』(2016年)に影響を与えたといわれています。