マグミクス | manga * anime * game

『ふしぎなメルモ』放送から49年。「スカートめくり」の時代に<性と生命>の神秘描く

1971年から全26話で放送された手塚アニメ『ふしぎなメルモ』。赤いキャンディーと青いキャンディーを食べて変身しながらトラブルを乗り越えていく少女の物語は、テレビの前の子供を夢中にさせました。でも実はこの作品は、性と命を教える教育アニメでもあったのです。メルモちゃんに託された手塚治虫氏の思いを探ります。

憧れの変身アイテム、赤と青のキャンディー

『ふしぎなメルモ トレジャー・ブック』(玄光社)。手塚治虫原作のテレビアニメ『ふしぎなメルモ』(71年)のために手塚自身によって描かれた画稿を中心に収録
『ふしぎなメルモ トレジャー・ブック』(玄光社)。手塚治虫原作のテレビアニメ『ふしぎなメルモ』(71年)のために手塚自身によって描かれた画稿を中心に収録

「メルモちゃん、メルモちゃん、メルモちゃん~が持ってる
あ~かいキャンディー、あ~おいキャンディー、しってるかい♪」

 当時の多くの子供たちがこのように口ずさんだテーマソングで始まる『ふしぎなメルモ』は、今から49年前、1971年10月から翌年72年3月までTBS系列で放送されたテレビアニメです。原作は“マンガの神様”と呼ばれた手塚治虫氏で、氏自らアニメ制作に深く関わった意欲作でした。

 主人公のメルモちゃんは、小学3年生の女の子。ある日突然、交通事故でお母さんを亡くし、幼いふたりの弟と生きていかなければならなくなりました。そんなメルモちゃんを心配して、お母さんが天国から届けてくれたのが、赤色と青色のミラクルキャンディーです。青いキャンディーを1粒食べれば10歳年をとり、赤なら10歳若返るという不思議なキャンディー。当時、テレビの前の子供たちは「こんなキャンディーが私にも届いたらいいのに……」と憧れたものでした。

 メルモちゃんはこのキャンディーを使って、年頃の女性になったりお婆さんになったり、さらには生物の進化をさかのぼって動物にまで姿を変えながら、さまざまなトラブルを乗り越えていきます。ちなみに“メルモ”という名前は、メタモルフォーゼ(Metamorphose=変身)のスペルから命名されたのだそうです。

 一話一話のエピソードもバラエティに富んでおり、学校内の話はもちろん、動物たちの悩みを解決してあげたり、若返りのヒミツを狙われて誘拐されたりと、子供たちをハラハラドキドキさせる冒険譚が満載でした。

1 2 3