1話に朽ちた主人公機の衝撃『太陽の牙ダグラム』 メカと政治を描いた、勝者なき長編
1981年10月23日、TVアニメ『太陽の牙ダグラム』の放送が開始されました。第1話は主人公機であるダグラムが朽ち果てているシーンからスタートし、視聴者の度肝を抜きます。プラモデルなど玩具の売上が良く、全75話という大長編となりました。
衝撃の「クラッシュ・ダグラム」
1981年10月23日は、TVアニメ『太陽の牙ダグラム』(以下、ダグラム)の放送が開始された日です。後に『装甲騎兵ボトムズ』など多数の作品を発表した高橋良輔監督が初めて手掛けたロボット物であり、主人公がテロリスト、敵は議会制民主制を敷いた地球連邦という、単純な勧善懲悪を否定する物語となっていました。作中では夢や希望に向かって突き進む若者たちや、野心と欲望を満たすために暗躍する大人たちなど、大きな歴史の流れのなかを必死に生きる人間模様を中心とした、見ごたえのあるドラマが展開されていました。1話冒頭で主人公機であるはずのダグラムが朽ち果てているシーンを見て、度肝を抜かれた記憶を持つ、ライターの早川清一朗さんが当時を回想します。
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「鉄の腕は萎え、鉄の脚は力を失い 埋もれた砲は二度と火を噴くことはない 鉄の戦士は死んだのだ。狼も死んだ、獅子も死んだ 心に牙を持つ者は、全て逝ってしまった」
『ダグラム』1話の冒頭、砂漠で朽ち果てているダグラムを背景に流れたナレーションは、主人公たちの敗北を意味するものでした。まだ小学校低学年だった筆者には難しい言葉だらけでしたが、それでもなんとなく理解はできたのです。それまで何本ものロボットアニメを見ていましたが、いきなり主人公機が打ち捨てられていた作品は初めてで、そのインパクトはあまりにも絶大だったのです。
実はこの1話は当初の予定では放送する予定がなく、2話が本来の1話として放送される予定でした。しかし2話はダグラムが登場せず、地味すぎると不安を感じた高橋監督が、予告編的な話を最初に入れようと判断し、クラッシュ・ダグラムから始まる1話が製作されたのです。ただ、絵コンテが間に合わず、アニメーターさんたちとけんかになりかけたところを共同監督だった故・神田武幸氏がとりなしてくれたと、後に高橋監督はインタビューで語っています。