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1話に朽ちた主人公機の衝撃『太陽の牙ダグラム』 メカと政治を描いた、勝者なき長編

政治家の父を持つ主人公が身を投じたゲリラ部隊「太陽の牙」

 さて、『ダグラム』の世界では、地球からの搾取に苦しむ惑星デロイアの人々による独立運動が展開され、さまざまなキャラクターがそれぞれの理由で戦い、そして暗躍します。

 この時代、地球は食料や資源の40%をデロイアに依存する状況となっていました。しかしデロイア人に対する差別と搾取は強烈なものがあり、高まる地球への不満は独立運動へと発展したのです。

 主人公のクリン・カシムは父親である地球側の高官ドナン・カシムがめぐらせた独立運動潰しの陰謀に巻き込まれるなか、デロイア人たちの苦しみを肌で知り、独立運動へと身を投じます。正規の訓練を受けたパイロットとして、そしてデロイアの未来を憂う若者としてデロイア製のコンバットアーマー(以下、CB)「ダグラム」を託されたクリンは、ロッキーやキャナリーといった仲間たちと共にゲリラ部隊「太陽の牙」を結成、貴重な機甲戦力として戦場を駆け巡ります。

 このときデロイア星は特殊な磁気を帯びたガス星雲「Xネブラ」に覆われており、コンピュータの性能が極端に低下してしまう事態に見舞われています。しかしダグラムにはXネブラへの対抗処置が施されており、地球側のCBに対して圧倒的なアドバンテージを持っていたのです。地球側もダグラムに対抗するために装甲を外し布で機体を覆った「パジャマソルティック」などで対抗しますが、ダグラムも外付け動力装置「ターボザック」を装備し強化を図るなど、戦いは熾烈を極めていきました。

 しかし胸に情熱を燃やす若者たちとは裏腹に、混乱に乗じて己の野心を満たそうとするものが現れます。ドナン・カシムの補佐官ヘルムート・J・ラコックが、自らがデロイアの支配者になろうと策謀を巡らせるのです。

 また、当初はゲリラのリーダー格として理想に燃えていたコール・デスタンは、実戦を経験していくにつれ徐々に落ちぶれ、自身を慕ってくれていた踊り子のリタを勘違いから殺害したことをきっかけに仲間を裏切り、ラコックの情報屋へと落ちぶれます。最後はラコックに切り捨てられ「寄生虫」呼ばわりされて逆上し、彼を背後から射殺してしまいますが、結果的にはラコックによるデロイア支配を防いだ形となりました。数発の銃弾が、クリンたちの繰り広げた数々の死闘よりもはるかに大きな成果をあげてしまったのは、皮肉というものでしょうか。

 メインキャラもサブキャラクターもそれぞれの重厚なドラマが展開されつづけたこの作品は、玩具の売れ行きが良かったこともあり、当時としても長い75話で完結します。クリンたち太陽の牙は敗れて武装解除、ドナンもラコックも死に、デスタンは行方知れず。ダグラムも二度と立ち上がることはなく、砂漠に朽ち果てた姿を晒すのみ。それでも生き延びたものは、明日へと向かわなければなりません。1年半の物語の最後を飾ったのは、他ならぬダグラム自身の言葉でした。

「だが砂漠の太陽に照らされながら巨人は確信していた
若者は今日も生き 若者は今日も走っていると
巨人は若者の声を聞いた
吹き渡る砂漠の風の中に確かに聞いた」

(ライター 早川清一朗)

【画像】人気が高かった登場メカ「コンバットアーマー」

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