声優・松来未祐氏の命日 38歳の若さで…症例が少ない難病で急逝
2015年10月27日、声優の松来未祐さんが38歳という若さで亡くなりました。発見が難しい難病「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」に冒され、最終的な死因は悪性リンパ腫でした。『ひだまりスケッチ』の吉野屋先生や『蒼穹のファフナー』の羽佐間翔子、『這いよれ!ニャル子さん』クー子などを演じた松来さんを追悼します。
松来未祐氏を襲ったのは「慢性活動性EBウイルス感染症(CAEBV)」

10月27日は、2015年に38歳の若さで亡くなられた松来未祐(まつき・みゆ)氏の命日です。『ひだまりスケッチ』の吉野屋先生や『蒼穹のファフナー』の羽佐間翔子など多彩な役を演じる一方、クー子役として出演した『這いよれ! ニャル子さん』では「後ろから這いより隊」の一員としてオープニングテーマの「太陽曰く燃えよカオス」を担当するなど、幅広く活動していた中で難病に倒れるという悲劇に見舞われました。
慢性活動性EBウイルス感染症(以下、CAEBV)。これが、松来氏の命を奪った病気の名前です。
EBウイルスことエプスタイン・バール・ウイルスは、日本では成人の90%以上が感染しており、多くの場合は抗体が産生されて制御されているごくありふれたものです。しかしごくまれに、なんらかのきっかけでウイルスが再活性化し、免疫制御が不可能になると、慢性的にウイルスが増殖して重症化し、最終的には多臓器不全や悪性リンパ腫を発症して死に至ります。松来氏も最終的な死因は悪性リンパ腫だったことが明かされています。
この病気の恐ろしいところは発熱を始めとしてさまざまな症状が発生するため、「ここがおかしい、あそこがおかしい」と思い病院を受診しても、CAEBVと診断されるまでに時間がかかってしまうのです。松来氏も首のリンパ節が腫れるなど体調不良を訴え、複数回病院を受診してもなかなか原因がつかめず、CAEBVの疑いが浮上したのは亡くなる5か月ほど前のこととなりました。
多い時には4つの番組でラジオパーソナリティを務め、アニメのレギュラー作品も多数、イベントに歌にと引っ張りだこだった松来氏でしたが、体調の悪化によって仕事を失うことを恐れ、親しい方には「私の具合が悪いことは言わないでください」と口止めをしていたそうです。
以前、ある実力派声優の方が「声優は、自分で仕事を作れない」特殊な生き方であると書いた記事を拝見しました。「誰かが作ったなにかに命を吹き込む」のが声優の仕事である以上、誰かに選ばれなくなれば、病気で退場してしまえば、もう復帰するチャンスはないかもしれないのです。次から次へとものすごい才能を持つ新人が現れる世界で、自分が紡ぎあげてきたキャリアを失うのはとてつもなく恐ろしいことでしょう。それでも、声優の方々には体調が悪ければ早めに療養に入って欲しいと切に願います。心の中に声が刻まれている方々の誰も、亡くなってほしくはないのです。