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『GODZILLA』から『ゴジラ』へ。日本とハリウッドが歩み寄った、半世紀あまりの歴史

「荒ぶる神」として蘇った、新しいゴジラ

『GODZILLA ゴジラ(2014)』。渡辺謙さんが芹沢猪四郎博士役で出演
『GODZILLA ゴジラ(2014)』。渡辺謙さんが芹沢猪四郎博士役で出演

 エメリッヒ版『GODZILLA』の反省を踏まえ、ハリウッドはさらに新しいゴジラ計画を進めます。それが『ゴジラ対ヘドラ』(1971年)の監督・坂野義光氏をエグゼクティブプロデューサーに迎えた、モンスターバース第1弾『GODZILLA ゴジラ』でした。渡辺謙さんを芹沢猪四郎博士役でキャスティング、特撮オタクの英国人ギャレス・エドワーズ監督が抜擢されます。

 エドワーズ監督は前作『モンスターズ/地球外生命体』(2010年)で見せたドキュメンタリータッチの手法が、高く評価されていました。『GODZILLA ゴジラ』でも、エドワーズ監督はその手法を活かします。2011年に起きた福島第一原発事故を彷彿させる原発事故シーンを物語序盤に盛り込み、フィクションの世界に緊張感をもたらしています。

 エドワーズ監督が新しいゴジラと戦わせたのは、放射性物質を餌とする新怪獣のムートーでした。ムートーはゴジラの天敵という設定です。次々と核施設を襲うムートーにゴジラが立ち向かうことで、凶暴なゴジラは人類にとっての「救世主」となります。ゴジラ=荒ぶる神、と改めて定義されたこともあり、エドワーズ版『ゴジラ』は日米のファンから受け入れられました。

 渡辺謙さんが、英語調の「ゴッジラ~」ではなく、日本語で「ゴジラ」と発音するこだわりを見せたことも好感ポイントでした。

芹沢猪四郎博士が下した重大な決断

『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)
『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』(2019年)

 モンスターバース第3弾『ゴジラ キング・オブ・モンスターズ』には、米国人のマイケル・ドハティ監督が抜擢されます。子どもの頃から「ゴジラ」シリーズに親しんできたドハティ監督は、ゴジラの覚醒シーンには伊福部昭作曲の「ゴジラのテーマ」を、モスラ誕生シーンには古関裕而作曲の「モスラの歌」を流すなど、ファン心理のツボを押さえた演出で楽しませてくれます。また、ドハティ監督は母親がベトナム出身ということもあり、東洋的思想と西洋文化との融和をサブテーマにしていることも特徴です。

 初期ゴジラへのオマージュ感たっぷりなドハティ版『ゴジラ』ですが、賛否が大きく割れたシーンが後半に待っています。渡辺謙さんが前作に引き続き演じた芹沢博士の決断です。第1作『ゴジラ』を意識した、とても心を揺さぶるシークエンスです。でも感動的である反面、日本人の持つ自己犠牲を尊ぶ精神性を強調したものとなっています。個人的には、現代的にアップデートされた芹沢博士であってほしいなと感じました。

 渡辺謙さんはその後、実録パニック映画『Fukushima50』(2020年)でも責任感の強いキャラクターを演じています。日本人の精神性は、簡単に変わるものではないのかもしれません。

 終戦から75年を迎えた2020年は、核兵器禁止条約が批准された記念すべき年となりました。核兵器が地上から消える日まで、ゴジラの咆哮は止むことはなさそうです。

(長野辰次)

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