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夜道雪さん&平川新士さんに聞く『マロナの幻想的な物語り』の魅力と新人声優のお仕事

「東京アニメアワードフェスティバル2020」でグランプリを受賞した『マロナの幻想的な物語り』は、ルーマニア出身のアンカ・ダミアン監督によるアートアニメ映画。日本語吹き替え版に出演した声優・夜道雪さんと平川新士さんに、お話を聞きました。

描かれているのは「人間の気持ち」

『マロナの幻想的な物語り』で吹き替えを担当した、声優の平川新士さん(左)と夜道雪さん(右)
『マロナの幻想的な物語り』で吹き替えを担当した、声優の平川新士さん(左)と夜道雪さん(右)

 東京アニメアワードフェスティバル2020(TAAF2020)でグランプリを受賞したのは、フランス発のアートアニメーション映画『マロナの幻想的な物語り』でした。動く前衛芸術とも評される不思議で優しい表現は、いつも見慣れた日本のアニメとは、ひと味もふた味も違います。日本語吹き替え版の主役を務めたのは、『この世界の片隅に』の演技でも高い評価を得た「のん」さん。一匹の犬の目を通して見つめたさまざまな人生を独創的な表現でつづった傑作として、今も全国各地でロングラン公開を続けています。

 主人公である犬のマロナの最後の飼い主となる女性・ソランジュと、優しくも哀しい男・イシュトヴァン。ふたりの日本語吹き替えを担当したのが、夜道雪さんと平川新士さんです。ふたりとも、声優としてはキャリアを踏み出したばかりですが、夜道雪さんはマルチタレントとしての芸歴を持ち、人気YouTuberとしても活躍されています。それぞれの仕事観や作品の魅力について聞きました。

* * *

──いわゆる深夜アニメなど日本の作品とは、まったく異なる表現で作られたアニメーション映画です。最初に映像をご覧になった時、どのような印象を抱かれましたか?

夜道雪さん(以下、夜道) 吹き替え前のセリフがフランス語ということもあって、最初はどこか「自分とは別の遠い国の話」のように感じました。でも、のんさんのお芝居など日本語で吹き替えられたものを観ると、それぞれの登場人物の生々しい気持ちが、この表現だからこそ伝わってくるようで……。たくさんの人たちとマロナという犬との関わり合いを感動的に描くというのだけでは終わらない、このアニメーションだからこそ伝わる「リアルさ」があると思います。

平川新士さん(以下、敬称略) 初見での視覚的な驚きは大きかったです。慣れ親しんだ主線やパースをしっかり取って人物を描くアニメとは、方法というか考え方というか、とにかく全く違っていますから。でも、描かれているのは人間の気持ちであって、そこは共通していますよね。

──見慣れたアニメやゲームの場合と、演じ方に違いはありましたか?

夜道 絵的な部分はもちろん、音楽なども、すべてが切り分けられることなくひとつの表現となっている作品のように思います。ですから、セリフを乗せる時は、キャラクターの声をキャラクターとして作りすぎて、それがアートとしての一体性や抽象性を崩すことのないようにと意識しました。

平川 声をあてる人物には何がどんなふうに見えていて、その人の肉体を通してどう感じられているのか。いつも収録で心がけていることを、この作品でも忘れないようにしたいと思いました。『マロナの幻想的な物語り』では、感情が人物の肉体をも超えて、世界と一体化するように動き出します。独創的な表現には、そういう意味があるんじゃないでしょうか。

【画像】映画『マロナ』の映像美。犬の一生を通して「幸せ」のあり方問いかける(15枚)

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