謎の「猫集会」 野良猫たちの会話を盗み聞きできたら、ちょっと怖っ…
漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。野良猫たちによる「猫集会」を見てほほえましく感じる迷子さん。でも実は、想像もつかないような恐ろしい意見が行われているのかもしれません……。
猫集会で話し合われていることとは?

漫画家の迷子さんによる描き下ろしエッセイ。
野良猫たちによる「猫集会」。のんびりと集まっているだけのように見えますが、実は恐ろしい意見交換がおこなわれているのかもしれません……。
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うかつにも猫の接近に気が付かずにいると、「わ」とひと言の叱責を受けることがある。滅多に鳴かない猫なので、ひと言だけでも声を発するというのはおそらくなかなかの抗議だ。お客様お待たせして申し訳ありません~の意味を込めて入念な猫マッサージを執り行っている。叱責のひと言は「わ」だったり「う」だったり「ん」だったり「や」だったりするのだが、人間で言うと総括で「ねえ」あたりだろうか。猫からの呼びかけなのだと思うと、この鳴き声の記憶と共に残りの人生前向きに生きていけそうだ。
たまに、口を開けて鳴く仕草だけをしている。音の出ないニャーだ。サイレントニャーと呼ばれているあれだ。人に聞こえない音域の鳴き声を発しているらしい。考えてみれば、猫避けの超音波発生装置なんていう商品も存在する。猫は人間よりも認識できる世界の範囲が広いのだ。もしや、たまに広場に猫が集まっている謎の猫集会も、人間に聞こえない音でやり取りをしているのだろうか。ただのぼんやりした毛玉の集まりと認識していたのにまんまと騙されてしまった。
そんな自分たちには認識できない世界について一度考えだすと、どうしようもない。人に見えない姿で動き、人に聞こえない音域でコミュニケーションを取り、人に感知されないまま存在する別次元の生物がそこらじゅうにいたりするのかもしれない。向こうがこちらを一方的に認識しているとしたら、それはちょっと嫌だ。自分たちの存在にも気が付かず地球を占拠している気分の二本足の猿をさぞ馬鹿にしているに違いないのだ。違いないとも。
謎の猫集会は、着々と地球の占領を進める別次元生物対策会議なのだということにしよう。地球の明るい未来とおいしい猫缶を作る二本足の猿を守るため、毛玉たちは今日もぼんやり広場に集まる。途中で味方になる黒猫の活躍を夢見て、応援のうちわでも作っておこうと思う。
(迷子)