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『鬼滅の刃』で注目すべき、子供たちとの関係と「あの少年ジャンプ」【この業界の片隅で】

アニメ業界の片隅で生きる著者・おふとん犬が、業界の片隅で拾ったさまざまな話題を取り上げて解説します。今回は、業界内でも尊敬と羨望を集める『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』の爆発的ヒットについて。「売れ方」に目を向けると、これまでにない傾向や、週刊少年ジャンプにまつわる、あるエピソードが浮かび上がってきます。

今までにない異質な「子供たちからの支持」

マンガ『鬼滅の刃』22巻(集英社)
マンガ『鬼滅の刃』22巻(集英社)

『鬼滅の刃』がなぜ社会現象と言えるほどの人気を呼んでいるのか? さまざまな要因がからみ合っていますので、明確な答えは誰にも出せないでしょう。『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』のメガヒットに新型コロナウイルスの感染拡大が影響しているというのは、一面的には正しいはずです。

 ハリウッド作品をはじめとした有力な新作映画の供給停止と観客自体の減少、そして利益率の高い飲食物の販売制限によって苦しむ興行側が、ここぞとばかりに多くのスクリーンを開けて上映回数も限界まで増やしたことが、当初の興行成績を押し上げ、その数字がさらなる話題を呼ぶ形になりました。

 ただ、興行側は必ず着席率(映画館の席数に対してどれだけのお客さんが座っているか)を見て、今後の上映館数や上映回数を判断します。極端に単純化した計算ですが、仮にふたつの上映館で同じ作品をかけていて平均着席率が50%だとすると、その作品を上映するのは1館に減らし、空いたもう1館では着席率50%以上を見込める別の作品をかけた方が、映画館側の儲けになる可能性が高いわけです。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』については、この着席率についても、今のところ非常に高い数字を維持したまま推移しています。したがって、仮にコロナ禍がなかったとしても、上映自体はいずれにせよロングランになるでしょうから、長期的には現状とさほど変わらない高い興行収入を叩き出していたと思われます。

『劇場版「鬼滅の刃」無限列車編』について、本当にスゴイと思うのは2点です。ひとつ目は、TVシリーズの続きのストーリーのうえ、コミックスを読んでいれば結末は分かるにも関わらず、そんなことはお構いなしにお客さんが来て熱狂していること。ふたつ目は、子供たちから絶大な支持を集めていることです。

 特に後者については、「子供がリアルタイムに視聴する放送枠で」「長期間アニメを流して作品に親しんでもらい」「オモチャで展開を拡大することで」人気作として根付かせる……という今までにあった(いわゆる子供向けアニメの)黄金パターンの要素が、見事にひとつも当てはまっていません。それだけ、ダイレクトに子供たちの心に届く魅力が作品にあるということなのでしょう。

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