『カリオストロの城』公開当時は賛否両論? 宮崎駿氏が仕掛けたトリックとは
ファンの間で大きく割れた評価

公開当時の『カリオストロの城』は、評価が大きく割れました。当時の声を要約すると、「面白い。でも、これはルパン三世じゃない」というものだったように思います。
爽快なアクションシーンの連続に加え、ルパンが潜入するカリオストロ城には数々のトリックが仕掛けられており、最後まで目が釘づけになります。ルパンが守ろうとするお姫さまのクラリスはとても健気で、石川五ェ門ならずとも「かれんだ」と呟きたくなります。
長年、『ルパン三世』を見てきたファンはもちろん、宮崎監督がTV第1シリーズ後半から高畑勲監督とのコンビで演出を手掛け、第21話「ジャジャ馬娘を助けだせ!」などの名エピソードを残していたことは知っていました。とはいえ、いつもは軽薄ぶっているルパンがお宝ではなく、少女の心だけを盗んでしまうという純情ぶりには戸惑いを覚えてしまったのです。峰不二子のお約束ともいえる、セクシーショットもありませんでした。
ファンは作品の世界観を非常に愛する一方、その世界観を壊そうとする行為には抵抗を覚えがちです。宮崎監督の野心的劇場デビュー作『カリオストロの城』は、興収的には『ルパンVS複製人間』を下回る結果で終わりました。ただし、『カリオストロの城』の魅力は、即効性のものではなく遅効性のものだったのです。
宮崎監督が見せた「換骨奪胎」の手法
宮崎監督が『カリオストロの城』で仕掛けたのは、ルパンや銭形警部といった既成のキャラクターたちを使って、『ルパン三世』の世界を宮崎駿ワールドに塗り替えてしまうという大トリックでした。劇場監督デビュー作でそれを成し遂げるとは、なんという大胆さでしょう。『カリオストロの城』で持てる力をフル発揮した宮崎監督は、オリジナル作品『風の谷のナウシカ』(1984年)という次のステージへ進むことになります。また、カリオストロ城に隠された秘密は、人気作『天空の城ラピュタ』(1986年)にもつながることになるのです。
宮崎監督が『カリオストロの城』で見せた、いわば「換骨奪胎」の手法は、のちに押井守監督の『うる星やつら2 ビューティフル・ドリーマー』(1984年)、細田守監督の『デジモンアドベンチャー ぼくらのウォーゲーム!』(2000年)、原恵一監督の『クレヨンしんちゃん 嵐を呼ぶ モーレツ!オトナ帝国の逆襲』(2001年)などの劇場アニメに踏襲されることになります。すでにあるキャラクターを使って、若手監督が演出力を炸裂させ、それまでの世界観を塗り替え、やがて次のステージへと進み、よりオリジナル性の強い作品を発表する、という日本アニメ界にとってプラスになる流れが生まれました。
公開当初は興行的に苦戦した『カリオストロの城』ですが、TV放送をきっかけに宮崎監督の人気は高まっていきました。また、ルパンというキャラクターも、作品ごとにさまざまな顔を持つ多面的な存在となり、より魅力を深めていったのではないでしょうか。
時間はかかりましたが、宮崎監督が『カリオストロの城』で仕掛けたトリックは、大成功だったと言えそうです。ルパン三世の名前を借りた宮崎監督は、ファンの心をまんまと盗んでみせたのですから。
(長野辰次)
●【本編プレビュー】ルパン三世 カリオストロの城(TMS公式)




