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吉田戦車の傑作マンガ4選。「不条理ギャグ」を確立、作者自身が葛藤した作品も

2020年、東京新聞の広告キャラクターに吉田戦車の代表作『伝染るんです。』に登場する「かわうそ君」が起用されました。連載開始から30年以上が経過してもなお、その人気ぶりが伺えます。一方、名前は知っていても作品を読んだことない方もいらっしゃるはず。そこで今回はそんな吉田戦車の魅力を思い切り味わえる4つの作品を紹介します。

今こそ読みたい! めくるめく不条理ギャグワールド

 「不条理ギャグ」「シュールな笑い」というものが日本に定着して久しいですが、ギャグマンガシーンにおいてそのジャンルを確立したのが、吉田戦車とされています。もちろん、吉田戦車の登場以前にも、いがらしみきお『ネ暗トピア』など、不条理ギャグマンガの土壌は出来上がってこそいましたが、このジャンルで全国区的な人気を獲得したのが吉田戦車といえるかもしれません(ご本人はこの評価が当初、とても苦手だったそうです)。彼の作品は、のちのマンガ界のみならずエンタメ業界全般に影響を与えました。

 その人気は現在でも高く、2020年12月10日(木)~12月21日(月)の期間、「ビッグコミックスピリッツ創刊40周年」の企画として、池袋マルイで『クマのプー太郎』(中川いさみ)、『コージ苑』(相原コージ)などの作品と一緒に『伝染るんです。』の原画展が開催されます。

 不条理とは? ギャグとは? そんな難しい話は抜きにして、魅惑の吉田戦車ワールドを堪能できる4作品を紹介したいと思います。

●哲学者も唸った伝説の作品、『伝染るんです。』(全5巻)

 吉田戦車の名を一躍スターダムに押し上げた作品であり、その後のギャグマンガシーンに多大な影響を与えた作品です。1989年から1994年にかけて『週刊ビッグコミックスピリッツ』で連載されました。

「不条理ギャグ」ながらも人気キャラクターが数多く誕生したこの作品。大学受験を控えるカブトムシの斎藤さん、やたらと卑屈なカワウソくん、愛を知らぬしいたけ、イルカのような体をした山崎先生など、キテレツながらいじらしいキャラクターたちが不条理ギャグ世界の水先案内人となってくれます。

 単行本の装丁はブックデザイナーの祖父江慎氏が担当。作品の世界観にあわせ、あえて乱丁しているかのように見せる前代未聞の演出が施され、これもまた大きな話題を集めました。

 この作品はのちのギャグマンガのみならず、お笑い界や映画界などエンタメ全体に多大な影響を与えました。哲学者・永井均の著作では「新しい文字を発明した少年」の4コマなどが取り上げられ、アカデミックな分野にも衝撃を走らせました。今読んでも間違いなく笑える、不朽の傑作ギャグマンガです。

●「不条理ギャグ」×「下ネタ」…一体どうなる!?『スカートさん』(全1巻)

単行本『スカートさん』(KADOKAWA)
単行本『スカートさん』(KADOKAWA)

 吉田戦車の不条理ギャグに「下ネタ」を取り入れたのが、2008年に発売された『スカートさん』です。連載開始時は「吉田戦車が下ネタ?」と注目を集めましたが、蓋を開けてみればこちらも大爆笑必至の傑作となりました。

 天才・吉田戦車からすれば下ネタはギャグの手段でしかないようで、「恋をするとトップレスになる女子大生」「人間と木のリアルな愛憎劇」「正常位という名前の少年の苦悩」などなど、決して下品にならないラインで見事にギャグと下ネタを融合しています。

 とりわけ「トップレス女子大生」のシリーズは笑いながら読み進めるうちに「そもそもなんで裸ってダメなんだっけ?」と、読む側の常識がぐらつく感覚が味わえます。もちろん下ネタのない四コマも多数収録されており、「自分の感情にあわせて表情を後から描くのっぺら坊」シリーズなど、頭の奥底を揺さぶるギャグがてんこ盛りです。

【画像】メディアの広告キャラにも進出した、『伝染るんです。』のかわうそ君(8枚)

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