マグミクス | manga * anime * game

吉田戦車の傑作マンガ4選。「不条理ギャグ」を確立、作者自身が葛藤した作品も

作者自身がが「好きじゃなかった」と公言するも、人気作に…

●“風呂”だけの四コマを量産!『フロマンガ』(全4巻)

『フロマンガ』第1巻(小学館)
『フロマンガ』第1巻(小学館)

 お風呂をテーマにしたマンガといえば『テルマエ・ロマエ』(ヤマザキマリ)が有名ですが、こちらの『フロマンガ』もぜひ手にとってみて欲しい作品です。タイトルの通り「お風呂をテーマにギャグ」という、実にストイックな縛りを設けた作品です。こちらは『ビッグコミックオリジナル』で連載されました。圧倒的なセンスと無尽蔵とも思える量産性を兼ね備えている吉田戦車だからこそ可能だった作品と言えそうです。

「年頃の娘がお父さんと一緒にお風呂に入らなくなるまでの日数を数えるカウンター」というアイテムから派生した父親の悲哀を描くシリーズなど、毎回切れ味抜群のギャグを飛ばしてくれるこの作品。また風呂をテーマにしているだけあってか、不条理ギャグの中に人間味を醸し出す、そんな吉田戦車ワールドに肩まで浸かれる珠玉のギャグマンガです。

●「悲哀」×「ギャグ」を実現した異色作『いじめてくん』

単行本『いじめてくん』(太田出版)
単行本『いじめてくん』(太田出版)

 最後に紹介するのは四コママンガではない作品です。主人公“いじめてくん”は何とも情けない顔つきで、常にオドオドした1頭身のキャラクター。その雰囲気は周囲の嗜虐心を煽りに煽り、実際にいじめてしまうと……爆発!いじめてくんの正体は“嗜虐心”につけ込んで開発された生物爆弾なのです。その後、いじめてくんはお坊さんの修行に使われたり、テロ組織に狙われたり、急に火星に行ったりと、さまざまな場面で人々の嗜虐心を煽りまくります。

 一方、作者の吉田戦車本人は“いじめ”という行為自体をギャグマンガのネタにしてしまったことを当初、とても後悔していました。その作者の心理を反映してか、徐々にストーリーにも変化が。いじめてくんは自身の存在意義に苦悩し、やがて自立を目指していく成長物語へ転換されていきます。あらゆることをギャグにしてきた吉田戦車が唯一、いじめだけはギャグにできなかったという点は、昨今話題の“誰も傷つけない笑い”にも通じ、吉田戦車作品が今もなお愛され続ける理由を紐解くヒントになるかもしれません。

 ここまで紹介した4作品の他にも、架空の県を舞台にした『ぷりぷり県』、吉田戦車作品を代表するキャラクターも数多く登場する『殴るぞ』、育児エッセイマンガ『まんが親』など、実に多くの作品が生み出されています。興味のある方はぜひ一度、吉田戦車の「不条理ギャグ」の世界に触れてみてはいかがでしょうか。

(片野)

【画像】メディアの広告キャラにも進出した、『伝染るんです。』のかわうそ君(8枚)

画像ギャラリー

1 2 3