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昭和女子が自分ごとのように感情移入した、『アタックNo.1』鮎原こずえの「強さと涙」

空前のバレーボールブームを生み出した、少女向けスポ根アニメ『アタックNO.1』。次々と降りかかる逆境に努力と根性で立ち向かう主人公・鮎原こずえは、強さと可憐さが同居するニューヒロインとして昭和女子の心をつかみました。苦境にあらがう陰でこずえが流す涙に、少女たちも胸をふるわせたのです。

努力と根性のかげで流す涙が少女たちに共感された

『アタックNO.1』1stエピソード DVD(ヴィジョネア)。主人公・鮎原こずえの目元には涙が光る
『アタックNO.1』1stエピソード DVD(ヴィジョネア)。主人公・鮎原こずえの目元には涙が光る

 昭和の女の子たちが、まるで自分が主人公であるかように身を入れ、成長を見守ったアニメといえば、『アタックNO.1』でしょう。今から51年前の1969年12月に放送が始まった、バレーボールに青春をかけるスポ根少女アニメです。主題歌も大ヒットしたので、今でも歌える方は多いでしょう。

 昭和女子なら、何か困ったことがあると心の中で「♪苦しくったって 悲しくったって…」と口ずさんでしまうのではないでしょうか? 歌詞のなかで特に印象深いのは「だけど涙がでちゃう、女の子だもん」のフレーズですが、これは主人公の一途な生き方があったからこそ、昭和女子たちの心に響いた言葉でした。

 主人公の鮎原こずえは、転校した先の中学校で学力重視の校風に反発したため、不良グループのリーダーとされてしまいますが、彼らを率いてバレー部と対決し勝利をおさめたことで実力を認められます。ここからこずえは、日本一のアタッカーを目指してバレーボールの道を歩んでいくこととなるのですが…その道は平坦でないどころかイバラだらけ。これでもかというほどの苦難が降りかかるのです。

 こずえをライバル視するチームメイトに陥れられて孤立したり、鬼コーチからは虐待といえるほどのしごきを受けたり、励まし合ってきたボーイフレンドが突然の事故で亡くなったり、みずからも病に倒れたり……。

 けれどもこずえは、決して負けません。転校して早々に学校に反発したことでもわかる通り、正しいと思ったことは臆せず口にする一本気な性格で、襲いかかる試練に立ち向かいはねのけていきます。絶対的な権力であったはずの鬼コーチにも、おかしいと思ったら歯向かう強さも持っていました(そのために、さらなる窮地に追い込まれることもありましたが)。こずえは、それまでの従順さが美徳とされた女性像とは異なる、たくましいヒロインだったのです。

 ただし、こずえの魅力は強さだけではありません。厳しいしごきや襲い来る苦難に耐えるかげで……そう、「だけど涙がでちゃう、女の子だもん」と涙を流すのです。こずえの涙はテレビの前の少女たちに、苦しいときには泣いてもいいこと、でもその涙が、再び闘うための糧になることを教えてくれました。
 
 このアニメで人生に大きな影響を受けた昭和女子たちは少なくありませんが、元バレーボール日本代表の大林素子さんもそのひとりです。

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