【漫画】オリックスファンたちの悲喜こもごも 作者「怒られる?」の心配も高評価
コロナ禍のなかでも、2020年のプロ野球は人びとに毎日の楽しみを提供し、夢と感動を与えてくれました。そんなシーズンを、ファンの視点で追いながら描いてきたのが、NAKATAさんによる『オリックスファン(オリファン)の漫画』です。
日常を思い出させてくれたプロ野球に「感謝しかない

日本プロ野球の2020年のシーズンは、クライマックスシリーズを経て福岡ソフトバンクホークスが日本一となり、2017年から続く4連覇を達成して幕を閉じました。このシーズンをファンの視点で描いているのが、NAKATAさん(@NAKATA55795234)による『オリックスファン(オリファン)の漫画』です。
この作品の主人公は、春から新たにオリックス・バファローズのファンになった男性。やや自虐風のネタも含めながら、プロ野球のチームを応援する楽しさを伝えているマンガです。シーズン終了後には、読者から「オリックスファンならではのあるあるが面白かった」「来季も楽しみにしてます!」といった感想が数多く寄せられています。
作者のNAKATAさんに、お話を聞きました。
ーーNAKATAさんがマンガを描き始めたきっかけを教えて下さい。
ご存知の通り、今年初めから新型コロナウイルスが猛威を振るいだして、今まで外にいた時間も家にいることが多くなったんですね。で、家でやれることをなんとなく探してたときに、ネットで『デジタル漫画入門』みたいな記事を見たんです。その瞬間、なぜか「自分にもマンガ描けるんじゃないか?」って全く根拠なく思ったんですよ。それまで一切マンガ描いたことないのに。でもその時は「昔チラシの裏とか教科書に落書きしてたしイケるイケる」とか激アマな考えでいっぱいで、その日にデジタルマンガ描く機材バーッと買って。まぁ実際描いてみたら、案の定、絵は全然描けないしマンガの構成はどうしたらいいのか分からない。結局最初の4コマを作るのに半月くらいかかりました。
そんなこんなで何とか完成したんで、Twitterのアカウント作って満を持してマンガをアップしたんですが、これがもう全然反応がないわけですよ。“いいね”もリツイートも全くのゼロ。それで多少ヘコんだものの「まぁ最初から反応もらえるわけないよなぁ、頑張ろう」と思い直して、また後日新しいマンガ描いてアップして。でもやっぱり反応はない。それからしばらくそれの繰り返しです。
“新しいの描く→Twitterにアップする→反応ゼロ”のループを10くらい回した辺りですかね。「自分のマンガ、マジで面白くないんだなぁ……」って完全に打ちのめされかけてたんですけど、あるひとりの方が「これ面白い!」と言ってリツイートして下さったんです。そしたら、今まで全くの無反応だったのがブワーっと反応が広がって。あの時は泣くほどうれしかったですね。その広めてくれた方は今も仲良くしてもらってるんですが、未だに感謝の念に堪えません。
ーー『オリックスファン(オリファン)の漫画』シリーズでは、新たにオリックス・バファローズのファンになった主人公を中心とした物語が描かれていますが、NAKATAさんのファン歴は?
2008年くらいに京セラドーム大阪に初めてオリックス戦を見に行ったんですが、その時に衝撃を受けました。全然観客がいないんですよ。それまでも野球は好きで、いろんな球場に行ってたんですが、どこもファンが大勢いて歓声がすごかった。でも、オリックス戦は審判のコールが鮮明に聞こえるし、何ならボールがキャッチャーミットに収まる音までキレイに聞こえる。それくらい人がいなかった。「いくら何でも人気なさすぎだろ!」って思いましたね……。
そんななかでも外野の応援席は、結構ファンがいたんです。それが気になって内野から外野に移動したんですけど、そしたらみんなすごい熱い。熱いし本当に楽しそうで。また、歌ってる応援歌がめちゃくちゃ格好良いんですよ。そこで「うわぁいいなぁコレ」って思ったんですよね。その日からちょっとずつオリックスが気になり始めまして。スポーツニュースでもオリックスの勝敗気にしたり、応援する選手もできたりして。で、数年後には本格的にファンクラブに入って、今に至ります。
ーーNAKATAさんが考えるプロ野球やオリックス・バファローズの魅力とは何でしょうか?
プロ野球の魅力は、やはり日本最高峰のプレーが見られることじゃないですかね。投手見れば「球はえー!」「変化えぐー!」ってなりますし、野手見れば「足はえー!」「守備うまー!」ってなりますもんね。それだけでも楽しいんですが、そこに“贔屓のチーム”って概念が入ってくると、さらに楽しい。同じチームのファン同士なら一緒に盛り上がれるし、違うチームのファンでもお互いの戦力の話題で交流できる。そういうコミュニケーションツールとしても、プロ野球は魅力高いと思います。
うーん、オリックスの魅力……改めて言われると難しいですね。「素晴らしい投手陣」「将来有望な若手が多い」「吉田正尚の豪快なバッティング」「応援歌が格好良い」など、挙げればたくさん出るんですけど、もしそのなかのどれかが消えたとしても、多分変わらず応援すると思うんですよ。「○○がきっかけでファンになったけど、それももうなくなっちゃったし、弱いし地味だし魅力がもう何なのかよく分からないけど、でもオリックス・バファローズが好きなんだよなぁ」ってなってるファン、自分も含めて結構いるんじゃないですかね。100%憶測ですが……。

ーー新型コロナウイルスの影響もあり、2020年のプロ野球は例年と違うことも多かったと思います。ファンとして振り返って、いかがでしたか?
月並みな言い方になりますけど“野球が見れる喜び”を実感したシーズンになりました。コロナ禍で先行きも不安で、TVつければ毎日嫌なニュースばっかりで。そんななかで久々に野球を見られたときに、なんというか“日常が戻ってきた”感があったんですよね。いや、実際には全然戻ってないんですけど、コロナ忘れて「ナイスピッチング!」「なーにエラーしてんだ!」「やったーホームラン!」とか言ってることに安心できたというか。再開前には「こんな非常事態に野球とかふざけてるのか」という意見もかなりあったと思うんですが、自分としては「いろいろ対策を講じてプロ野球を再開してくれてありがとう。日常を思い出させてくれてありがとう」という思いしかありませんでした。
まぁ開幕してすぐに千葉ロッテマリーンズに同一カード6連敗を喫して、「開幕しない方が良かったかもしれない」とも思ったんですが(笑)。
ーー作品に対する反応で、特に印象に残った読者の声があれば教えて下さい。
アップする前は「このマンガ、オリックスファンから怒られるんじゃないか……?」という不安があったんですが、蓋を開けてみたら「分かる!」「笑った!」って声が大半で、すごく安心しました。あと他球団ファンから「オリックスってこうなの?」という反応もありましたが、「そう! オリックスってこうなの!」と今まで知らなかった人に知ってもらえた感があってうれしかったですね。
また、他球団の中でも千葉ロッテマリーンズ、中日ドラゴンズ、東京ヤクルトスワローズあたりのファンの方たちは「ウチもこうだわ……」と共感して下さる意見が特に多くて面白かったです。「お前らも分かってくれるか! 辛いな! 一緒に頑張ろうな!」的な(笑)。
ーー今後、Twitterで発表される作品については、どのように活動していきたいとお考えでしょうか?
好きなものをマンガにして発信する楽しさを知ることができたので、ほかの趣味でもマンガにしていけたらなぁと思ってます。野球以外ではゲームが好きなので、差し当たってはゲームのマンガとか。あとはオリジナルのストーリーマンガをぜひ描いてみたいですね。
『オリックスファン(オリファン)の漫画』は、ネタが出る限りは続けたいです。たまに「マンガを読んでオリックスが好きになりました」という意見をいただくんですが、本当にうれしいですね。描いたマンガを読んだ人が、オリックス・バファローズに興味を持ってくれて、そこからファンになってもらえたのであれば、これ以上幸せなことはありません。
(マグミクス編集部)