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【シャーマンキング30周年への情熱(19)】蓮田村のお寺で「武井コーナー」を作った住職の想い

住職が劇中のアイテムを自作した理由とは?

ご住職が石材屋に依頼して製作した「フツノミタマノツルギ」。緋色は無理だったができるだけ近い石を選んだとのこと
ご住職が石材屋に依頼して製作した「フツノミタマノツルギ」。緋色は無理だったができるだけ近い石を選んだとのこと

 正法院は、蓬田駅からほど近い道沿いにあります。横には「阿弥陀川」が流れており、これが葉の持霊・阿弥陀丸の由来のひとつだそうです。幼少期の真冬、武井先生はここに弟をソリに乗せて浮かべ、流されていくのを腹がよじれるほど笑って見ていた……という馴染みのある川です(汗)

 さてご住職が「シャーマンキング」を深く知るようになったのは、2017年夏にJR東日本が発行した「トランヴェール」の特集がきっかけとのこと。武井先生が円空(えんくう)上人の足跡を追う特集で観音菩薩坐像を拝観しに来た後だったと言います。ではそこで作品に感銘を受け劇中のアイテムを自作した……だけではありません。ご住職の想いというのは少し別のところにあったのです。

「1080」や「フツノミタマノツルギ」は、本堂の奥に設置された「シャーマンキングコーナー」に飾ってあるのですが、実は本堂に入ってすぐ横には、新海誠監督の作品「雲のむこう、約束の場所」(2004)をはじめ、実写映画のロケなどで蓬田村が使われたということを示す自作の資料が置かれています。そしてその横には「ローマ法王に米を食べさせた男」(講談社)と「奇跡のリンゴ」にまつわる本が……。

 これでピンと来た方は鋭いと思いますが、ご住職の想いというのは、蓬田村の発展だったのです。米とリンゴの本に共通しているのは、ブランド化の重要性です。そのための手段としてご住職は「アニメやドラマによる町おこし」的なものをずっと思い描いていたわけですね。

ご住職が自作された「1080」。劇中ではヒロイン・恐山アンナが持っていた数珠で、もっと巨大だが、これはこれで本当にありそうである
ご住職が自作された「1080」。劇中ではヒロイン・恐山アンナが持っていた数珠で、もっと巨大だが、これはこれで本当にありそうである

 そこで、同村出身の先生の漫画が売れていると知り、大きなきっかけを得たご住職は、人が訪問したくなるように「1080」と「フツノミタマノツルギ」を自作したのです。ですからご住職は、見学に訪れたファンのことをよく覚えていて感謝していました。ただ、そこから先の発展はご住職ひとりの努力でどうにかなるものではありません。「シャーマンキング」が村の多くの人たちにとって「きっかけ」になればと願う次第です。

 ところで「シャーマンキング」コーナーには、円空上人の観音菩薩坐像……の複製品があります。最初は本物を飾っていたものの、周囲から物騒だといろいろ言われたとか(笑)本物は奥の間にありますが、筆者はご住職と話が弾み、ありがたいことに本物を拝見できました。その同じ部屋に「仏ゾーン」のイラストが置かれていましたよ。

 この他ご住職からは、武井先生のご先祖にまつわる先生も知らない凄い話を聞いたりもしたのですが、それはまた別の機会にでも。この有意義な取材で勢いを得た筆者は、一路、下北半島へと向かいます。どうぞ年末のレポートを楽しみにお待ちください!!

(タシロハヤト)

●正法院の本堂の奥に設置された「シャーマンキング」コーナー(360度画像)

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【写真10枚】作者・武井宏之氏の故郷、蓮田村で正法院を訪ねる

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タシロハヤト

美少女ゲームブランド「âge(アージュ)」の創立メンバーで、長らくシナリオ、演出、監督等を務める。代表作は「君が望む永遠」シリーズ、「マブラヴ」シリーズ。現在はフリーで活動中。『シャーマンキング』の作者、武井宏之氏と旧知の関係である縁から、同作の20周年企画に参加している。
https://twitter.com/tamwoo_k