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「スーファミ」発売の1990年、玩具屋が年末年始に行った「なるほど!」な戦略とは

クリスマスとお正月。どこの玩具屋も子供たちであふれています。1年で一番忙しい年末年始、玩具屋はどんな戦略でこの繁盛期を乗り切るでしょうか。「スーパーファミコン」が発売された30年前に玩具屋で働いていた筆者は、年末年始にターゲットを明確にした緻密な「作戦」に従事していました。

クリスマスの目玉商品だった「スーパーファミコン」

任天堂から1990年11月に発売された「スーパーファミコン」は、その年のクリスマスの人気商品だった。画像は「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」(任天堂)
任天堂から1990年11月に発売された「スーパーファミコン」は、その年のクリスマスの人気商品だった。画像は「ニンテンドークラシックミニ スーパーファミコン」(任天堂)

 年末年始はどんな職業の方でもお忙しいと思います。そのなかでも玩具屋という職業は、他のシーズンに比べて特に慌ただしかったと、実際に玩具屋で働いたことのある筆者は思っておりました。

 そこで筆者の体験談から、玩具屋の年末年始をご紹介したいと思います。時間は今からちょうど30年前、1990年の年末から1991年の年始にかけて体験したことをお届けいたしましょう。

 あの時期、玩具屋で何が一番売れたかというと、間違いなく「スーパーファミコン」です。スーパーファミコンはクリスマス商戦を狙ったのか、1990年11月21日に発売を開始しました。正式発表は2年前の1988年秋でしたが、半導体不足などの理由で発売は遅れてしまいます。

「ドラクエ」ブームほどの混乱はなかったのですが、「スーパーファミコンありませんか?」という問い合わせは、毎日何度もありました。しかし、本当に入荷数は少なく、いくら問屋に頼んでも週に数個単位しか入ってきません。

 そこで、筆者のいた玩具屋では、あえて小出しにして店頭には出さず、ひたすら倉庫にため込み、クリスマスイブ前日の日曜日に店頭に積み上げました。

 これにはどんな意味があるかというと、目立つ時期に人気商品を大量に置くことで「この店は品ぞろえがいい」と思わせる効果があるということです。

 今のようにネットで情報が拡散するという時代ではありませんでしたが、お客さんの口コミが広がり、その日のうちにすべて売れてしまいました。この口コミを聞いたお客さんが来店して「まだある」という状況を作るためにも、商品が大量に要るわけです。

 ファミコンブーム以降、玩具屋の高額商品の中心はゲーム機とゲームソフトでしたから、このような戦略で予約数を増やす店舗も多かったことでしょう。

 ちなみこの時、「スーパーファミコン」を買えなかった人が、代わりに「ゲームボーイ」と『テトリス』を買っていくという風景がよくありました。まだ前年に発売したばかりのゲームボーイはそれほど普及率が高くなく、スーパーファミコンの代わりに買うという人は少なくなかったのです。

 もちろん、普通のオモチャにも人気商品がありました。1990年の人気商品といえば、間違いなく「元祖SDガンダム」でしょう。しかし、筆者のいた玩具屋は、クリスマス時期にはあまりメインには置かず、どちらかというと数を絞って置いてありました。

 それには、年始を見越した「戦略」があったのです。

【画像】1990年のクリスマス…人気だった商品・ソフトたち(7枚)

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