日本中が涙した『フランダースの犬』は現代に問いかける…ネロ少年を追い詰めたもとは?
根も葉もない噂で、仕事を失うことに

1年間にわたって全52話が放映された『フランダースの犬』ですが、第44話でおじいさんが亡くなると、最終回まで不幸の連鎖が次々と起きてしまいます。おじいさんの葬儀を済ませたネロの手元に、お金は残っていませんでした。
そんなとき、コゼツ家の所有する風車小屋が火事となり、アロアに会うことを禁じたコゼツを憎むネロの仕業だという噂が村に広まります。まったくの冤罪です。コゼツに対する忖度から、村人たちは牛乳運びの仕事をネロに頼まなくなってしまいます。家賃が払えないネロは、家を出ていくより仕方ありません。
八方塞がりのネロにとって、唯一の希望はアントワープで開かれる青少年絵画コンクールに優勝することでした。優勝すれば、賞金で生活することができ、絵の勉強もできます。ネロは一心不乱に絵を描きます。おじいさんとパトラッシュと一緒に過ごした大切な思い出を一枚の絵として描き上げます。クリスマスに発表されるコンクールの結果が、ネロは楽しみでした。
しかし、結果は無情でした。優勝したのは、プロの絵描きから教わっている裕福な家庭の子供でした。失意にうちひしがれたネロは帰り道、たくさんの金貨が入った袋が雪に埋もれているのを見つけます。コゼツがうっかり落とした大切なお金でした。ネロは金貨に手を出すことなく、そのままコゼツ家に届け、アロアが引き止めるのを振り切って去っていくのでした。
生きる希望を失ったネロが辿り着いたのは、アントワープの大聖堂です。大聖堂には地元出身の大画家ルーベンスの絵が飾られていました。憧れのルーベンスの絵を最後に見ようと思ったのです。アロアに預けられていたパトラッシュは、夜道を走ってネロの元に現われます。ルーベンスの絵を見ることができたネロは満足し、パトラッシュと共に深い眠りに就くことになります。
絶望に陥った若者に、周りの大人たちは……
大聖堂で眠るネロとパトラッシュを、天国から降りてきた天使たちが優しく迎えるという荘厳さを感じさせるエンディングでした。でも、ネロには異なる選択肢はなかったのでしょうか?
おじいさんが亡くなった際、森で暮らす木こりのミシェルが、ネロとパトラッシュを引き取ると申し出ていました。ネロが絵を描くことも認めていました。ミシェルの仕事を手伝いながら、次回のコンクールに再挑戦することもできたはずです。しかし、一枚の絵を描き上げることにすべての情熱を注いだ少年に、「また次回、がんばればいいじゃない」という言葉は届かなかったようです。人は絶望の淵に追い詰められると、冷静な判断力を失ってしまいます。
孤立した若者に対して、近くにいた大人たちに理解力と思いやりがあれば……と思わざるを得ません。




