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日本中が涙した『フランダースの犬』は現代に問いかける…ネロ少年を追い詰めたもとは?

決して絵空事ではない、ネロという存在

「日本アニメーション」によって制作された「世界名作劇場」は、東映動画(現・東映アニメーション)出身者たちが多く関わっていました。『フランダースの犬』のキャラクターデザインを手掛けたのは、ベテランアニメーターの森康二氏でした。東映動画時代、森康二氏は劇場アニメ『長靴をはいた猫』(1969年)などの作画監督として活躍しました。とりわけ、絵を見ただけでほっこりした気分にさせる、かわいい動物キャラクターを得意としていました。

 誠実な人柄で、宮崎駿監督ら後輩アニメーターたちから慕われていた森康二氏ですが、東映動画上層部の経営方針の転換から退職を余儀なくされ、TVアニメの世界で働くようになります。『日本アニメーションを築いた人々』(叶精二著、復刊ドットコム)には、【テレビの過密スケジュールと格闘しながら、膨大な原画チェックに追われた】【テレビの激務は森氏の身体を蝕んだ】と記されています。失明の危機に晒されながら、森氏は作画監督、およびキャラクターデザインの仕事を続けたそうです。

 アニメーション制作は大変なハードワークです。体を壊す人や給料の安さから辞めていく人が少なくありません。絵を描くことに純粋な喜びを感じていたネロの生き方は、森康二氏をはじめとする黎明期のアニメーターたちの姿とどこか重なり合うものを感じさせます。

 自分の好きな道に進み、その道で食べていくことができればどんなに素晴らしいことでしょう。1975年にTV放映された『フランダースの犬』は、自分らしさを失うことなく、現実世界で生きていくことの難しさを子供たちに問いかけた社会派アニメーションだったと言えるのではないでしょうか。クリスマスが近づくと、ネロとネロに寄り添うパトラッシュの姿が思い浮かびます。

(長野辰次)

●フランダースの犬 第1話「少年ネロ」(日本アニメーション公式)

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