『STAND BY ME ドラえもん 2』で微妙だった「のび太」の評価。原因は構造的な難しさだった?
「おばあちゃんのおもいで」や「ぼくの生まれた日」など、原作マンガでも名作といわれるエピソード群で構成された映画『STAND BY ME ドラえもん 2』ですが、映画を観た人の間では、原作との違和感、特にのび太への反感を挙げる声が目立ちます。原作マンガと長編映画の性質の違いに注目して、その理由を解説します。
原作のエピソードを再構成すれば原作に忠実になる?

遅ればせながら、『STAND BY ME ドラえもん 2』(以下『2』)を観ました。2014年に公開された前作『STAND BY ME ドラえもん』(以下『1』)は、『ドラえもん』史上初の3Dアニメということで話題になり、数ある映画『ドラえもん』作品のなかでもトップの80億を超える興業収入を記録しました。
東宝による公開初日のアンケートによると、20代から40代が客層の4割を占めるなど、『ドラえもん のび太の恐竜』に端を発するこれまでの未就学児から小学生をメインターゲットにしていた2Dアニメの映画「ドラえもん」シリーズとはまた違った、新たなファン層を開拓した作品です。
それから6年が経過して製作された本作は直接的な続編で、『1』で描かれた「のび太の結婚前夜」の翌日、のび太としずかとの結婚式とその裏側で起こった「のび太失踪事件」の顛末を軸に、過去・現在・未来を股にかけてのび太とおばあちゃん、そしてお父さんお母さんら家族の絆についてのエピソードが展開されます。
ただ、同作は残念ながら前作ほどファンに受け入れられてはいないようです。原作マンガや2Dアニメの『ドラえもん』に親しんでいる人ほど、本作、特にのび太への違和感を覚えたという声が目立ちます。筆者も鑑賞時に同様の印象を受けましたが、その理由について考えていきたいと思います。
山崎貴監督らスタッフの原作への愛からか、「STAND BY ME ドラえもん」シリーズは、原作のエピソードのなかから印象的なものを抽出して長編映画に再構成するスタイルを取っています。確かに原作の要素を多くするほど、原作に近いテイストで映像化できるはずでしょう。
しかし『ドラえもん』や『クレヨンしんちゃん』などの読み切り短編形式の原作を長編映画化する場合、オリジナルのプロットを作成するか、あるいは原作の一編を発展させる(『のび太の恐竜』など)例が多いです。これは、読み切り短編の連作と長編作品ではキャラクターの行動やエピソードの展開に求められる質が異なるからです。