『鬼滅の刃』だけではなかった! 2020年、アニメ業界が”揺れた”6つの出来事
2020年のエンタメ界は新型コロナによって大変な苦境に立たされましたが、一方で劇場版『鬼滅の刃』という、日本映画史に残る特大級のヒット作も生まれました。また、自宅で楽しめるネット配信、音響や臨場感にこだわるIMAXシアターなど、映画鑑賞のスタイルも多様化が進んでいます。アニメの話題とともに、この1年を回顧します。
「緊急事態宣言」後の世界、予見したアニメ作品も…?

コロナ禍にステイホーム、洋画の話題作の相次ぐ公開延期、そして一大社会現象となった『鬼滅の刃』ブーム……さまざまなニュースが駆け巡った2020年の国内エンタメ界の話題を、アニメーション作品を中心に振り返ります。
●1月 『映像研には手を出すな!』放映スタート
1月6日よりNHK総合にて、大童澄瞳原作、湯浅政明監督のTVアニメシリーズ『映像研には手を出すな!』全12話の放送がスタート。女子高生・浅草みどり、金森さやか、水崎ツバメの電撃3人娘が「映像研」を立ち上げ、アニメーションづくりに情熱を燃やす学園ものです。地味に思われがちなアニメ制作ですが、変わり者のみどりが想像した世界が、プロデュース能力に優れたさやかとアニメーター志望のツバメの協力によって色彩豊かなアニメーション世界へと広がっていく様子は、視聴者の心を躍らせるものがありました。
第8話の学園祭エピソードで、みどりがツバメのことを「(友達より大切な)仲間です!」と告げるシーンにグッときた人も多かったようです。みどりの個性的な声を演じた伊藤沙莉さんは、女優としても大変な売れっ子になっています。
●4月 「東京五輪2020」を予言した『AKIRA』が4Kリマスター化
大友克洋監督の傑作アニメ『AKIRA』(1988年)が4Kリマスター化され、4月3日よりIMAXシアターで上映されました。東京オリンピックの2020年開催を的中させていたことでも話題を呼んだ『AKIRA』ですが、劇中ではAKIRAの封印が解かれたために東京都心は壊滅状態に陥ります。奇しくも新型コロナウイルスの感染拡大によって、3月24日には東京五輪の延期が発表。さらに4月7日には東京、神奈川、埼玉、千葉、大阪、兵庫、福岡、続いて4月16日には全国を対象に緊急事態宣言が行われ、外出の自粛や映画館やライブハウスなどの人が集まる施設の使用制限などが求められました。
公開予定だった映画は、次々と公開延期に。夜の街からは人影が消え、『AKIRA』で描かれたネオ東京さながらの荒涼とした光景が広がりました。
●6月 究極の手描きアニメ『音楽』が海外で高評価
1月からミニシアター系でロングラン上映されていたアニメーション映画『音楽』が、フランスで6月に開催された「アヌシー国際アニメーション映画祭」で最優秀オリジナル音楽賞を受賞しました。2019年にはカナダの「オタワ国際アニメーション映画祭」でグランプリも受賞しており、海外で高い評価を得ています。
岩井澤健治監督が単独で7年以上の歳月を費やし、作画枚数は4万枚超えとなった大変な労作です。実際の人の動きをトレースする「ロトスコープ」という伝統的なアニメ手法が使われ、クライマックスとなるロックフェスシーンが臨場感たっぷりに描かれています。12月16日にブルーレイ&DVDがリリースされているので、究極のアナログ表現を年末年始に楽しんでみてはいかがでしょうか。