【シャーマンキング30周年への情熱(21)】神回「恐山ル・ヴォワール」の舞台・青森を訪ねる(中)
マンガ『シャーマンキング』の名エピソードとしてファンに愛されている「恐山ル・ヴォワール」の舞台を現地取材。マンガ本編と見比べながら、葉とアンナたちのドラマの舞台をお楽しみいただく聖地レポートの中編です。
第4章 恐山への道
マンガ『シャーマンキング』の主人公・麻倉葉が幼少期にヒロイン・恐山アンナと初めて出会う一連のエピソード「恐山ル・ヴォワール」編(講談社『シャーマンキング 完全版』19巻、20巻に収録)は、青森県むつ市街と霊場・恐山を舞台としています。
劇中で描かれた場所の現在の様子と劇中の描写を比較しながら紹介する、聖地レポートの中編をお届けします。今回は恐山に舞台を移して紹介します。引き続き単行本を片手にお楽しみ下さい。
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●葉とマタムネたちが恐山へと向かう道
1枚目の画像は、恐山街道を進む葉とマタムネたちが山を越えて最後の長い下り坂を下りていく時に目にする光景です。前方に小さく三途の川と太鼓橋が描かれており、カーブを進んだ左奥が恐山です。
恐山に向かう道路のナビ板も、今ではデザインこそ変わっていますが、変わらず存在します。なお薬研(やげん)というのは、周りを原生林に囲まれた温泉地の地名で、その開湯は約400年前と言われます。奥薬研と呼ばれる場所はさらに古く、約1150年前だと言われています。恐山を開山した円仁(えんにん・慈覚大師)がこの地で迷って怪我を負った際、河童が導いてくれたことで発見された……という由来があるそうです。
●「三途の川」と太鼓橋
山を下ってくると、左手にはカルデラ湖・宇曽利山湖(うそりやまこ)が広がっています。そして恐山まで残り500mほどのところに、「三途の川」とそれにかかる太鼓橋があります。筆者の母曰く、ここには幼い頃からすでに道路があって、太鼓橋はその脇に佇んでいたとのこと。つまり使わない橋でした。
しかし、この橋は「生者が渡って良いものではない」と教えられたので、不思議はなかったそうです。ただ、今でこそ老朽化で通行禁止ですが、近年までは生者でも渡ることができました(笑)。
その代わりと言ってはなんですが、ここで写真を撮ると必ず心霊写真になると言われたものでした。また「帰りは振り返るな」とも言われました。ほかに「太鼓橋の急な勾配は悪人には針の山に見えて渡れない」とも言われているようで、筆者はそこまでは知りませんでしたが、渡ることができたので少なくとも当時は悪人ではなかったようです……。
なお「三途の川」というのは、宇曽利山湖から流れ出ている唯一の川・正津川(しょうづがわ)のことです。三途の川にしては細いのですが、罪の重さによって川の幅は変わるといいますから、死者の目にはさまざまに映るのかも知れません。
ところでこの太鼓橋は、数年以内に石造りの橋に掛け替える計画があるようですね。確かにこの橋が落ちると死者は困ってしまうので、永劫に朽ちない石造りにするのは良いと思うのですが、風情という点で言うと、その橋に趣が出てくるのは数十年先でしょう。ですから、興味のある方は過去50年の歴史を背負った、木造橋の最後の姿を記憶に留めておくのも良いでしょう。