理想の女性ヒーロー『ワンダーウーマン1984』は、「弱さ」も丁寧に描く物語だった
2020年12月から公開されている『ワンダーウーマン1984』は、最強の力を持つ女性ヒーローが世界の危機に立ち向かう、アメコミ原作映画です。同作は心に響くさまざまな演出で、単なる「強さ」を超えたヒーロー像を見せてくれています。
舞台が「1984年」になった理由とは…?
数度の公開延期を経て、日本では2020年12月18日から公開されている映画『ワンダーウーマン1984』は、スーパーマンやバットマンなどで知られるDCコミックスを原作とした映画化作品です。アメリカではクリスマスの12月25日に劇場公開されました。
2017年にガル・ガドット主演で公開された『ワンダーウーマン』の続編である今作は、前作に引き続き女性監督であるパティ・ジェンキンスがメガホンをとり、主演のガル・ガドットも続投しています。
1984年の世界を舞台に、全人類の欲望の暴走と立ち向かうという設定で、景気拡大まっただ中のアメリカでヒーロー活動をするダイアナことワンダーウーマンが描かれています。欲望を操る伝説の石“ドリームストーン”の力で驚異的な能力を得た実業家「マックスウェル・ロード」(マックス)と、原作でも宿敵として長年ワンダーウーマンと敵対し、時には力を貸すヴィラン「チーター」も本作を盛り上げています。
また、今作では「孤独」を抱えたワンダーウーマンの内面が丁寧に描かれています。超人的なパワーを持つ女性ヒーローのイメージが濃く出ていた前作よりも女性らしさが強調され、ダイアナという人間の人生がわかるシーンが目立っていました。愛する人がいても相手だけ年を重ねていってしまうことから、人と距離を置いている……という事情もわかりやすく表現されています。
そして、「1984年」という設定も見事で、核を抑止力としていた米ソ関係や、中東の石油政策、80年代ファッションなど、同時代の社会情勢が物語に幾度となく関わってきます。
監督は1984年を舞台に選んだ理由を「歴史上、最高で最低な時期だったから」と語り、最も極端だった時代にワンダーウーマンを登場させる構想を実現させたかったと話しています。人の欲望が世界を巻き込んでいくストーリー展開は、この時代設定に非常にマッチしているといえるでしょう。
※次ページの内容はストーリーの核心に触れる内容が含まれますので、映画を未鑑賞の方はご注意下さい。