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「鬼殺隊」の御用にはなりません! 人間界に溶け込む“鬼”マンガ 3選

日本は空前の鬼ブーム真っ只中!『鬼滅の刃』では人食いとして恐れらた鬼ですが、鬼だって書店で働いたり、クリーニング店を経営したりと、人間界に溶け込んでいるんです! この記事では、鬼が登場するマンガ作品を3つご紹介します。この鬼たち……鬼殺隊と遭遇する確率はゼロです。

「悪鬼滅殺」とはほど遠い…人間界に溶け込みすぎる鬼たち

 いまや毎日見かける「鬼」 の文字。2020年は新型コロナウイルスと『鬼滅の刃』が話題の筆頭でしたが、一説には平安時代末期や鎌倉時代など、歴史上では社会が混乱した時期に鬼の物語が人気を博してきたそうです。

 鬼が登場する作品は古くからありますが、マンガ作品では『うる星やつら』や『地獄先生ぬ~べ~』など。近年では『鬼灯の冷徹』『鬼門街』など意外と多くあります。日本は空前の鬼ブーム真っ只中ですが、この記事は“悪鬼”でもなく“滅殺”もしない、日常をテーマにした鬼作品をご紹介します。

●ももたん『本屋の鬼いさん』

書店で働くユーモラスな鬼たち 著:ももたん『本屋の鬼いさん』第1巻(KADOKAWA)
書店で働くユーモラスな鬼たち 著:ももたん『本屋の鬼いさん』第1巻(KADOKAWA)

『本屋の鬼いさん』(著:ももたん)は、KADOKAWAの漫画雑誌「B’s-LOG COMICS」にて連載され、単行本(全3巻)が発売済みの“本屋さんで働く鬼”をテーマにしたマンガです。

 天地創造から46億年……。人間の監視にも飽きた神様たちの間では、マンガ・アニメ・ゲームなど日本のサブカル文化が大ブームに。ついには、自分たちの娯楽のため地上(池袋)で書店の経営を始めます。その書店には神様や妖怪、たまに人間もやって来ますが、店員は個性豊かな鬼たち。そして普通の人間・桃太郎がバイトとして働き出し、鬼たちと日々奮闘するハイテンションギャグコメディです。

 本作の鬼はエプロン姿が素敵なイケメン3人衆。なかには平安時代に悪行の限りを尽くしてきた鬼もいますが、今ではすっかり更生し書店の店員に。来店する客も見所で……魔界のお偉いさんが魔道書を購入したり、大日如来が“BL本”目当てにお忍びで来店したりと、主人公の人間・桃太郎が知らない新鮮な毎日が繰り広げられています。そして、どの鬼も書店で働くことに生きがいと誇りを感じており、その様子は見ていてすがすがしいほどです。日々の生活に疲れた時にもオススメの作品です。

●ふかさくえみ『鬼桐さんの洗濯』

クリーニングの知識がガチな鬼! 著:ふかさくえみ『鬼桐さんの洗濯』第1巻(竹内書房)
クリーニングの知識がガチな鬼! 著:ふかさくえみ『鬼桐さんの洗濯』第1巻(竹内書房)

 本屋で働く鬼がいるなら、クリーニング店を営む鬼もいます。『鬼桐さんの洗濯』(著:ふかさくえみ)は竹内書房「まんがライフオリジナル」にて、2017年より連載されている作品。東京のクリーニング店「洗濯屋鬼桐」を営むのは鬼の“鬼桐(おにぎり)さん”。住み込みで働く人間の茶子とともに、神様や妖怪が汚した衣類をキレイにする4コマの日常ファンタジーです。

 実はこの作品、ネット上では“ガチすぎる”洗濯マンガとして話題になっています。店主は鬼、客は神様とファンタジー設定ながら、作中で紹介される洗濯知識はホンモノ。作者のふかさく先生は、クリーニング店を開業するために必須とされる「クリーニング師」の免許を取得。シミ抜きの方法やアイロンのかけ方など、マンガを読んでいるうちに洗濯知識まで学べる異色の作品です。ちなみに洗濯洗剤大手の花王「アタック」が担当した単行本の帯には「参考文献ガチすぎやしないでしょうか」とのお墨付きまで。

●ながしまひろみ『鬼の子』

温かな世界の鬼 著:ながしまひろみ『鬼の子』第1巻(小学館)
温かな世界の鬼 著:ながしまひろみ『鬼の子』第1巻(小学館)

 コンテンツ配信サイト「cakes」で連載され、単行本(全2巻)も発売中の『鬼の子』(著:ながしまひろみ)はタイトルの通り、鬼の子供“オニくん”が主人公。ある日、野球部を退部した中学生のみのるくんは、グラウンドで練習を眺めるオニくんと出会います。話を聞くと、オニくんの家族は人間を避けるために人里離れた場所で暮らしてきたのですが、そんな生活から抜け出すために家出してきたといいます。以来オニくんと、みのるくんは一緒に住むことに。ふたりで野球をしたり、学校に通ったり……オニくんは周りの人間との交流を通じて、自分の人生を模索していくストーリー。

 作品通して描かれるテーマは「父親」です。オニくんは人間の世界で暮らしても“根は鬼である”ことに葛藤し、一方のみのるくんも父親にある問題を抱えており……。ふたりがさまざまな体験を通じて心通わせる情景は、誰もが共感できる物語です。

 また、『鬼の子』が人気となっている要因のひとつが絵本のように柔らかなイラストにあります。作者のながしまひろみ先生はイラストレーターとしても活躍し、『鬼の子』も徹底した手描きへのこだわりから制作されています。タブレットでラフを描いた後、プリントアウトして鉛筆で手描き、色付けもパソコン上で微調整してから水彩画で手塗り……と手間暇を惜しまないマンガ作りは、ストーリーへの没入感を深めています。

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 物語に登場する鬼は、“善良な鬼”から“悪に徹する鬼”までさまざまですが、共通しているのは、どれも人間以上に人間味があふれているところです。

 2021年の始まりは、お気に入りの鬼を見つるおウチ時間はいかがでしょうか。

(椎名治仁)

【画像】鬼=悪者ではない、愛すべき鬼キャラたち

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