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終戦から10年経たずに『ゴジラ』を作ることができたワケ。魚屋でゴジラの足を調達?

ゴムの長靴すら、簡単に手に入らなかった時代

2016年に公開された『シン・ゴジラ』はCG技術をふんだんに使用しているが、初代『ゴジラ』へのオマージュなども多く盛り込まれている (C)2016 TOHO CO. LTD.
2016年に公開された『シン・ゴジラ』はCG技術をふんだんに使用しているが、初代『ゴジラ』へのオマージュなども多く盛り込まれている (C)2016 TOHO CO. LTD.

 さて、着ぐるみを採用するとなったものの、現場スタッフにはノウハウというものがほとんどありません。そこで参考にしたのは、江戸時代から続く菊人形の技術です。金網で型を作り、その上から紙を貼れば、骨組みの完成。菊の代わりに、その上から綿とゴムで皮膚を作っていけば、私たちが想像するゴジラの出来上がりとなるのですが……ここでさらなる問題が発生します。

 せっかく調達してきたゴムで造ったゴジラの着ぐるみ第1号は、人が入って動かすにはあまりにも重すぎたのです。結果、ゴジラの着ぐるみはなんと上下半分に切られ、部分的に撮影される方法が採られます。ポスターにあるような鉄塔を破壊するゴジラは、実は撮影の合間に作られた着ぐるみ2号なのです。

 さらに、当時の物資不足のなかで、ゴジラの足の造形にも苦労します。ゴジラの足の内部には当初、下駄が仕込まれていましたが、ゴムの重さで鼻緒が切れてしまいました。そこで出たのが、代わりにゴム長靴を使用するという案。ところがいくら探し回ってもゴム長靴を売っている靴屋がありませんでした。そこでスタッフはわざわざ築地市場に出向き、魚屋さんに頭を下げてゴム長靴を調達したのです。物資の上では、どこまでも “戦後”でした。

 こうして何もかもが手探り状態で製作された『ゴジラ』ですが、公開されるや観客動員数961万人という空前の大ヒットを記録。以降、国内だけで30本以上の映画が製作される大人気シリーズと成長し、現在に至るまで世界中のクリエイターに影響を与え続けています。

 2021年に公開5周年を迎える『シン・ゴジラ』は、モーションキャプチャーによるフルCG合成となり、ゴジラの着ぐるみは登場しませんでした。しかしその重厚な動きは紛れもなく第1作目『ゴジラ』の遺伝子を受け継いだものです。製作技術が向上すればするだけ、その時点の限界に挑み続けたゴジラシリーズの製作スタッフの息遣いはなお生き続けることでしょう。

(片野)

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