『快傑ズバット』放送から44年。高い人気を支えた「ワンパターンの美学」とは?
2月2日が何の日か? を決定づけた名セリフの数々。特撮番組『快傑ズバット』が今なおファンの記憶に鮮明に残る大きな理由のひとつは、ワンパターンの美学にありました。
宮内洋氏の熱演に、子供も大人も釘付けに…

「2月2日、飛鳥五郎という男を殺したのは貴様か!」…というセリフで、本作をおぼえている人も多いことでしょう。そう、本日2月2日は『快傑ズバット』の放送開始日です。
1977年に放送開始した本作は、当時から高い人気がありました。ゴッコ遊びのようなものから卒業した子供たちも夢中になって見て、主人公の早川健の代表的な台詞はみな覚えていたほどです。
前述のセリフのほかにも…
「日本じゃぁ二番目だ」
「このもの〇〇〇(犯罪名)犯人…」
(オープニングの途中で)「飛鳥ぁ!」
……というセリフをモノマネするのは、当時流行っていた遊びのひとつです。
その人気は子供だけにとどまらず、もっと高い年齢層、大学生などにも好評でした。『ゴジラ』の映画や第一期ウルトラシリーズで子供だった世代です。いわば特撮ヒーローの第一世代。それは放送当時、まだ本格的なアニメ誌でなく、一般的なサブカルチャー誌だったころの「月刊OUT」で取り上げられていたことでもわかります。
しかし、本作がこれほどまでに広い年齢層、特にヒーロー番組を卒業していたような年齢層に高い人気があったのはなぜでしょう?
それは主演である宮内洋さんの魅力と言っても過言ではありません。本作は極端なことを言えば、宮内さんの活躍を見る作品だからでした。
ヒーロー番組といえば、変身したヒーローが敵と戦うことがメインです。しかし、本作はヒーローであるズバットの活躍よりも、変身前の姿、すなわち宮内さんが演じる私立探偵・早川健の活躍がメインとなっていました。
かつて『仮面ライダーV3』で主役を演じていた時、宮内さんはシナリオではV3に変身しているシーンでも、スタッフに自分の出番にするよう説得していたという逸話があります。アクションシーンなら並みの役者に負けないという自負があったと聞きました。その言葉通り、宮内さんは危険なスタントも次々にこなしたといいます。
それが結実したのが本作でした。ギリギリまでズバットの出番はなく、ひたすら宮内さんの芝居を見ることができる。この変身ヒーロー番組を否定するかのような展開が、本作最大の魅力ではないでしょうか。
この“変身後のヒーローの出番が少ない”という点が、逆に高い年齢層の琴線に触れたのかもしれません。「変身ヒーロー=子供向け」という見方はどうしてもしてしまいますから。
ヒーローの活躍が少ないということがマイナス要素に思える点は、素顔のヒーローである早川健の活躍が補って余りあったのです。