『カイジ』ほか藤原竜也出演の映画4作品。人気マンガの実写化はお任せ?
実写化ブームを過熱させた『デスノート』の演技バトル

藤原竜也さん主演のヒット作といえば、『デスノート』『デスノート the Last name』(2006年)も忘れられません。松山ケンイチさんと共演した『デスノート』二部作が大ヒットしたことで、人気コミックの実写化ブームが過熱したと言っても過言ではありません。でも、なぜ藤原さんはコミック原作の実写化企画に起用されることが多いのでしょうか。
二次元上のキャラクターを、実写映像化して生身の人間が演じることは容易ではありません。下手すると、痛いコスプレショーになってしまいます。原作のファンから、バッシングされる可能性もあります。
藤原さんの場合は、若々しい容貌に加え、舞台出身者ならではのちょっとオーバーな台詞まわしが、現実世界とは異なるコミックの世界観とマッチしやすいのではないでしょうか。二次元の世界と現実世界との、よき仲介者となっているように感じます。また、舞台で鍛えてきた基盤があるからこそ、大量殺人を重ねながら理想社会を築くことを夢想する夜神月/キラのような難しい役にも果敢に挑むことができるようです。藤原さんの思いきりのよさと役への集中力は、多くの共演者が称賛しています。
一方、『デスノート』のL(エル)役でブレイクした松山ケンイチさんは、細かいディテールを積み重ねることで、役になり切っていくタイプです。演技タイプの異なるふたりが火花を散らす面白さが、実写版『デスノート』にはありました。
『るろうに剣心』ではラスボスを大熱演

藤原さんが挑んだ難役として、『るろうに剣心 京都大火編』『るろうに剣心 伝説の最期編』(2014年)のラスボス・志々雄も挙げることができます。志々雄は顔も含めて全身を包帯に覆われており、顔の表情を見せることができません。しかも、藤原さんは撮影途中からの参加でした。かなりハンデがあるなかで、明治政府に騙された恨みを持つ悪役・志々雄を実にエネルギッシュに演じてみせています。
他にもコミック原作の実写化映画として、有村架純さんとの共演作『僕だけがいない街』(2016年)も高く評価されています。リバイバルというタイムリープ能力を持つ主人公の葛藤を、藤原さんは繊細に演じています。この作品は、少年期に起きた連続殺人事件の真犯人を探し出すというミステリーでした。藤原さんが出演したコミック原作の実写化映画は、どれもサスペンスタッチの作品です。キャラクターの再現度よりも、物語展開に比重が置かれていることも、実写化に成功している要因のひとつでしょう。
最後にもう一度、藤原さんにとっての師匠である蜷川幸雄さんとのエピソードを。若い頃から、蜷川さんに厳しくダメ出しされてきた藤原さんですが、「今はすべてわかろうとしなくていい。いずれ理解する時が来るから」とも言われたそうです。藤原さんが俳優として大きく育つことを、2016年に亡くなった蜷川さんは期待していたことが分かります。藤原さんは、まだまだ成長過程にある俳優なのかもしれません。
いつか、もっと年齢を重ねた藤原さんが演じるカイジも観てみたいものです。きっと、さらに味わい深いクズ人間を演じてみせるのではないでしょうか。
(長野辰次)