『ONE PIECE』作者に「海賊マンガを、おれは描く!」と決意させた70年代アニメとは?
超大ヒットマンガ『ONE PIECE』には、作者が原点と呼ぶアニメがありました。それは70年代に放送された『小さなバイキング ビッケ』。『ONE PIECE』の作者をとりこにしたその魅力とは、いったい……?
主人公は小さくて弱虫な男の子だった
「週刊少年ジャンプ」で連載中の『ONE PIECE』といえば、言わずと知れた超ウルトラ級の人気マンガです。1997年の連載開始以来、日本出版界の記録を次々と塗り替え、2015年には「最も多く発行された単一作家によるコミックシリーズ」としてギネス世界記録にも認定されました。
人気は国内にとどまらず、翻訳版は世界42か国以上で出版され、全世界累計発行部数4億8000万部(2021年2月現在)を突破するほど。主人公の少年モンキー・D・ルフィが、海賊王になることを夢見て仲間たちと助け合いながら大海原を冒険していく物語に、世界中の人たちが心を躍らせているのです。
そんな『ONE PIECE』には、作者の尾田栄一郎氏が〈原点〉とも呼ぶアニメがありました。それが『小さなバイキング ビッケ』です。尾田氏はビッケについて、あるインタビューで「“明日、僕は父さんたちと航海に出るんだ”っていうシーンがあり、そのシーンにすごく憧れていたんです」と語っています。そして、海賊マンガのイメージがどんどんと膨らみ、中学生にしてすでに「これを連載しよう」と決めていたのだそうです。
ルフィの決めゼリフ「海賊王に、おれはなる!!!」風に言えば、「海賊マンガを、おれは描く!!!」と、尾田少年に決意させたアニメ『小さなバイキング ビッケ』には、どんな魅力があったのでしょう?
原作は、スウェーデンのルーネル・ヨンソン氏による児童文学「小さなバイキング」。1972年にドイツの放送局と日本のアニメ制作会社との共同制作でTVアニメ化されました。日本では1974年から75年にかけて放送され、最高視聴率20.5%を記録するほど、子供たちを夢中にさせた作品です。
その魅力は、なんといっても主人公ビッケのキャラクターにありました。「バイキング」といえば七つの海を股にかける屈強な大男たち……といったイメージですが、ビッケは暴力が嫌いで心配性な、とっても小さくてかわいい男の子なのです。
海賊の長である父ハルバルは、ビッケにはとても航海は無理だと嘆きますが、実はビッケは誰にも負けない才能を持っていました。