「MILLION TAG」で、新たな才能とたくさん出会いたい…「ジャンプ+」編集部・岡本さん
どんどん次の作品を出していける人は強い
――「MILLION TAG」に限りませんが、新人漫画家の作品のどのようなところに注目しますか?
岡本 「狙いがあるかないか」ですね。新人漫画家さんにありがちなのが、いかにもありそうな展開を描いてしまうことなんです。たとえばラブコメを描くときにヒロインが「ちこくちこくー!」と、食パンをくわえて走っていると、すごく違和感があります。でも今でもラブコメらしい展開だからと描いてしまう人がいます。
バトル作品の主人公だと、昼間は教室の中で顔を伏せて寝ていて、夜になると真の姿を現す……というパターンが多いです。もちろんそのようなキャラクターにも魅力はありますが、「どうしてこれを描いたんですか?」と尋ねたら「なんかこういうのかなと思って」といった答えが返ってくるケースも少なくありません。
ひとつひとつの展開についての考え方や、キャラクターの行動の理由などが明確でないと、描かれたキャラクターが自分の意志で動いておらず、不自然に感じられたり、嘘っぽくなってしまいます。それぞれのシーンについて描きたい意志さえあれば、絵が拙くてもストーリーが荒くても印象に残る作品になるので、そこが一番のポイントではないかと考えています。
――漫画家になるために必要な才能とは、どのようなものなのでしょうか?
岡本 あえて言うなら、「悩まずに数を描けること」だと思います。ルールとか常識は一旦置いておいて、とにかく挑戦できる人。たとえ没になろうと賞に落ちようと、次々と「これどうですか?」と、どんどん出していける人は強いなと思っています。
――漫画家さんの才能が伸びた瞬間を間近で体験されたこともあるかと思います。具体的にはどのようなことが起こっていましたか?
岡本 明らかにネームの質が上がったり、絵のレベルが高まったりする場面を何度か体験しています。ネームやストーリーについては、「読者はここまでのことを理解できるんだ」「情報を渡しすぎると混乱してしまうんだ」というキーポイントを理解できるかどうかが大きいですね。
絵に関しては、ひたすらに研鑽(けんさん)を積むしかないのかなと思います。変化はゆっくりかもしれませんが、試行錯誤を重ねていって、ある日何かハマる絵柄や描き方を見つけた時に、水があふれるように変わっていくこともあります。
――逆に、なかなか伸びない……という方に共通点は見られますか?
岡本 手数が少ない人です。悩みすぎて、ひとつの題材にこだわり過ぎて停滞するパターンですね。他に、インプットが少ない人も難しいです。いま自分のなかにあるものでやろうとすると、どうしても手癖になってしまいますし、そもそも似たようなものを作り続けてしまいます。
ネームが通らず賞も取れない状況では、やはり何か足りないものがあるということなので、外から何かを取り入れないとどうしようもありません。アスリートにとっての食事のように、新しいものをインプットして、きちんとかみ砕いて昇華していく過程がどうしても必要なのだと思います。
――最後に、「MILLION TAG」に注目している方や参加を考えている方へのメッセージをお願いします。
岡本 参加してみたいと考えている方は、ぜひ遠慮せずに応募してみてください。やってみないことには始まりませんし、もしかしたら今回参加する編集者のうち、誰かのストライクゾーンに刺さるのはあなたの作品かもしれません。作品や才能を誰にも見せずに眠らせておくのはあまりにももったいないので、ぜひ見せて欲しいと思っています。
動画で企画をご覧になる方には、「編集者はこんな仕事をしているのだ」ということを、リアルに感じていただきたいです。マンガの編集者は原稿があがるのを待って、印刷所に駆け込むというイメージがあると思います。確かにそういう面もあるのですが、実際にはマンガづくりにさまざまな形で関わっているというところに注目していただければと思っています。
「MILLION TAG」は僕たちにとっても新しい試みで、まだこれから何があるのかはわかりません。嬉しいことや楽しいこと、逆に苦しいこともあるかもしれないですが、僕たちもしっかりと楽しみながらチャレンジしていけたらと思っていますので、みなさんもぜひワクワクしながら見てください。
※「MILLION TAG」は、2021 年 3 月 21 日(日)まで挑戦者を募集しています。詳細情報は公式サイト(https://sp.shonenjump.com/p/sp/million-tag/)に掲載。マグミクスでは、岡本さんのほかに4人の編集者の声を紹介しています。
(早川清一朗)
(C) LINK・宵野コタロー/集英社