シリーズ人気を確立した『プリキュア5』の功績。「ふたり」でなくなった大変革とは
不動のコンテンツへと成長

こうして新しい要素を加えてスタートした『5』は、序盤から高い人気を得ることに成功します。放送局がこの時間枠を「ニチアサキッズタイム」と呼称するようになったのも本作からでした。
その人気はアニメ本編だけでなく、商業的にも大きな成功を得ます。当時、カードを使ったアーケードゲームが玩具屋やゲームセンターで人気でしたが、ここにデータカードダス『うたって!プリキュアドリームライブ』として参入しました。こうして女の子向けコンテンツとして、確かな成長を遂げます。
この人気の高さで『5』は2年目の継続が決定されましたが、ひとつの問題がありました。それは1作目が『MH』になったように時間経過するとメンバーの卒業、つまり入れ替えをしなくてはならなかたことです。そこで製作スタッフは議論を重ねた結果、あえて時間経過を無視してキャラを同じ学年のまま2期目である『Yes!プリキュア5GoGo!』をスタートさせました。
この『GoGo!』から、6人目のメンバーとしてミルキィローズが加わります。この当時はまだプリキュアではないという意味で「キュア」の付かないメンバーもいましたが、以降のシリーズではすべてのメンバーが「プリキュア」ということになりました。いわばミルキィローズは最後の「キュア」が付かないプリキュアです。
また『5』の人気キャラといえば、敵であるのにどこか憎めない敵役ブンビーを忘れてはいけません。続編である『GoGo!』では、組織を変えて現れるなど、複数の作品をまたいで登場する敵役としてマジンガーシリーズのゴーゴン大公、戦隊シリーズのヘドリアン女王と並ぶ希少な存在です。しかも、プリキュア5たちがゲスト出演する他作品のプリキュア作品のテレビや映画にも登場するほどの活躍を見せます。
ファンには劇中に合わせて「さん」をつけ、ブンビーさんと呼ぶ人も多い人気者。筆者もプライベートではブンビーさんと呼んでます(笑)。
『GoGo!』の人気も前作に劣らぬ勢いで、商業的にも成功を収めました。そして、初めての全プリキュア集合映画『ちょ~短編 プリキュアオールスターズ GoGoドリームライブ』(2008年)が製作されます。タイトルでもわかる通り、前述したアーケードゲームがきっかけでした。
この作品がさらなるきっかけとなり、プリキュアたちが世界観をまたいで集合する春の劇場版がスタートするわけです。
こうして、『5』がきっかけとなってプリキュアはシリーズとして盤石となったばかりか、女の子向けの一大コンテンツにまで発展しました。今年2021年ですでに17年、プリキュアシリーズはもはや男の子向けのウルトラマン、仮面ライダー、スーパー戦隊と肩を並べるほどの一大ジャンルと言っても過言ではないでしょう。
(加々美利治)